混合診療解禁は本当に悪なのか? 〜TPPをめぐる議論

 庶民にとってTPP加盟が怖いのは、国民皆保険の崩壊なのである。理屈はこうだ―

 TPPに加盟するとサービス市場を開放しなければならない。米国が見るサービス市場の代表格は医療だ。混合診療保険診療保険外診療の併合)が解禁されて、株式会社化された病院が本格参入すれば、収益性の高い米国系資本の病院だけが勝ち残る。日本の国民皆保険は崩れ、米資本保険会社が参入する。

 この図式で誰が潤うかと言えば、米保険会社(米金融資本)である。
出典:http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/333.html


 実は、混合診療を解禁しろという圧力は、昔から日本でもある。
http://www.kongoshinryo.net/
 裁判でも、 混合診療を認めないのは法的根拠がないと認めている。

 法律以外にも、混合診療を禁止する合理的な理由はない。
 混合診療を認めた方が、国民福祉にもプラスなのだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B7%E5%90%88%E8%A8%BA%E7%99%82

 なぜなのだろうか?


 たとえば、ガンの治療。
 複数の薬を利用するとします。
(あくまでも判り易くした例です)。


 例えば、5種類の薬を使っているとします。価格は1種類どれも10000円です。5種類とも保険対象とします。・・・①


 1つの薬をより効果の高い、保険対象外のより価格が高い20000円の薬に変えたとします。
 つまり、4種類は保険対象。保険対象外は1種類です・・・②


 仮に、薬代の8割が保険でカバーされるとします。

 ①の場合。
 薬代は、5×10000円=50000円です。保険で8割カバーされますので、5000×0.2=10000円が自己負担とします。
 国の負担は、40000円です。

 問題は②の場合。どのような価格が考えられるでしょうか?


 ケースA 混合診療を認めた場合
 4種類薬が保険対象なので、
 薬代は、4×1000円=40000円です。保険で8割カバーされますので、40000×0.2=8000円
 国の負担は、32000円。
 20000円の薬代と合わせて、28000円が自己負担となります。
 
 ケースB 現状の自由診療
薬代は、4×10000円=40000円です。
 20000円の薬代と合わせて、60000円が自己負担となります。


 ケースAが混合診療を認めたケースですが...

 自国負担が8000円から28000円に増加しています。
 たいして、国庫負担は、40000円から32000円に減っています。


 確かに、金持ちがよりより薬を使えるのですが...
 別に国の負担は増えません。
 むしろ減る場合すら考えられます。
 なぜ、国の国民皆保険制度が崩壊するのでしょうか?

 患者としても、懐が多少痛みますが、自分の意思でより高い効果がある価格が高い薬を使うので損をしているわけではありません。


混合診療を使えない低所得者へサービスは低下するのでしょうか?】
 低下する理由がありません。負担が増える理由もありません。
 サービス・価格共に変わらないのです。


株式会社化された病院が本格参入すれば、収益性の高い米国系資本の病院だけが勝ち残る。

なぜ、こうなるのかの説明が、まずありません。


混合診療がないことにより、利益を得るのは保険会社】
 自由診療は、混合診療より高額になります。金持ちなら良いのですが...庶民には痛いです。
 では、庶民はどういう対策をするのか?
 高額の民間の保険に入ります。


 もし仮に、混合診療が認められれば、金額負担が減ります。
 その場合、保険にそもそも加入しないか、より安い保険に入るということになります。


 逆に考えますと、混合診療がないことによる高額医療費は、保険会社にとって、大きな殺し文句になるわけです。


【医療格差がでるか】
 一見拡大しそうですが...金持ちは既に自由診療により高度な医療を受けています。
 そのため、金持ちと低所得者の差が広がることはありません。

 実は、混合医療を可能にすることにより、メリットを得るのは、中間層であり、下位層です。

 現状では、8000円か、60000円かの選択肢しかありませんが...
 8000円、26000円、60000円という選択肢になるわけです。

 また、民間の保険の保険料支払いが低下することが期待されます。


 故に、混合診療を認めないのは、経済的合理性がないと言われるのです。

追記
【保険対象は縮小するのか?】
 混合診療を認めた場合、「政府の保険対象外を拡大する意欲が低下して、本来拡大すべき部分が拡大されない」との指摘がある。

 
 では、もし、混合診療がなければ、領域はガンガン拡大するのだろうか?

 それはない。
 そもそも、医療費の公的負担は拡大傾向であり、
政府としては、混合診療を認めようが、認めなくても、対象拡大に消極的だからだ。


 別に混合診療があろうが無かろうが、拡大に消極的な理由(財源)に、増減はない。
 ハッキリ言って、混合診療は関係ない。


 混合診療解禁で、使用実績と効果が明確になれば、領域拡大を望む声が大きくなるかもしれないですが...


混合診療を導入するとなぜ病院が倒産するのか?】

だからといって、「混合診療自由化」を許せば、それ以外の大多数の医療機関は、診療報酬は引き下げられ、経営悪化による病院倒産とそれに起因する地域医療の崩壊は、なお一層加速されるのは目に見えています。
出典:http://blog.m3.com/northcosmos/20090513/1


混合診療を認めると、
なぜ、診療報酬が引き下げられるのだろうか?


この辺のメカニズム・因果関係を説明したサイトを探しても、見つからない。

あえて言うとこちらでしょうか?
http://www.khk-dr.jp/gurafu/g1_4.htm
 
こちらの主張では、順序が逆になります。
つまり、報酬引き下げが先にあるわけです。
報酬引き下げになれば、当然病院の経営が苦しくなります。

そのため、別の収入源が必要になります。
それが自由診療であり、混合診療です。

つまり、このサイトでは、混合診療により、収入が増えると考えているようです。


病院が恐れているのは、
混合診療による収入の増加
②収入が増えるんだから保険対象の報酬下げても良いよねという役所の思惑。
③保健対象の報酬下げ
保険診療だけやっている病院の収入の減少。

というプロセスの様です。


う〜ん、判り辛い。