コカコーラとキリンの失敗

 野球の野村さんではないが、人間は勝つことよりも負けにより、多くの学びます。
 基本的に、他人の長所に依存した他人の成功よりも、他人の汎用的な失敗の方が役に立つと思います。
 今回は、マーケティングにおける失敗として有名ですが、「コカコーラ」と「キリンビール」を上げたいと思います。

■「コカコーラ」
 1983年4月23日、コカコーラ社は99年の歴史の中で初めて看板商品であるコカコーラの味を変えました。
 その背景には、コークとペプシを二つ並べて目隠しの状態で消費者に飲ませたところ圧倒的にペプシが勝ったためです("ペプシチャレンジ"という比較cmとして日本でも有名です)。
 そこでコカコーラ社は、十数万人を対象に何百万ドルもかけて事前調査を行いました。その結果、これならペプシに勝てるという味を開発して、大キャンペーンを展開し、新しいコークを全米に市場導入したのです。
 さて結果は、どうなったでしょうか?
 新・コークは発売と同時に全米の消費者から一斉に反対の声がわきあがりあました。デモや署名運動、反対のTシャツなどの運動まで行われた。
 結局、3ヶ月後、従来の製品(元祖コーク)をコカコーラクラシックとして復活させました。

■「キリンビール
 今、アサヒビールといえば、「スーパードライ」です。この話はマーケティングの成功例として、有名ですが、一方、キリンの「ラガー」は失敗例として有名です。
 1987年に、アサヒビールが「スーパードライ」を発売、ドライ戦争と呼ばれる競争が発生します。対して、キリンのno1ブランド「ラガー」(熱処理)は、1位でしたが年々シェアを侵食されていきました。
 時代の流れは、熱処理のビールから、「スーパードライ」のような生ビールに移項していました。
 1996年、キリンビールは、熱処理の「ラガー」を生ビールに変更しました。
 さて結果は、どうなったでしょうか?
 翌年の1997年にはキリンラガーが前年まで45年間保ってきた年間首位銘柄から転落し、新たにスーパードライが年間首位銘柄となりました。

■「コカコーラ」と「キリンビール」の失敗の共通点
 人々は、何にブランドを感じていたのでしょうか?
 何に愛着を持っていたのでしょうか?
「名前」でしょうか?
 色々ありますが、「味」です。
 上記の失敗は、人々の商品に対する慣れ親しんだ愛着・信頼を軽視したために、起きました。ブランドの力の源は、人々の商品に対する慣れ親しんだ愛着・信頼にも関わらず、無視し自らの手で源を壊し、ブランドを壊したわけです。
 "ペプシチャレンジ"は、目隠しの状態で消費者に飲ませるというのが、ポイントです。実は、ブランドを見た状態では、多くの人は「コカコーラ」を美味しいと応えたわけです。
 多くの人は、店頭でブランド見て買うわけですから、目隠しウンウンはインパクトは大きいし事実ですが、過大に評価されたと考えられます。
 「ラガー」も同じです。アサヒビールがどんなにあがいても、「ラガー」の味に愛着を持ち、離れない消費者はいます(本当にラガーの味を好きな人や保守的なラガードと呼ばれる層です。レイトマジョリティも入るか?)。
 彼らの攻略は、困難を極めましたが、キリンが味を変えたことにより、彼らを野に放ちました。彼らは、本当にラガーの味を好きな人や保守的な人なので、味が違う新しいラガーを好むわけがありません。結果として、キリンは予想通り敗北しました。

■なぜ、マーケティングを学ぶ必要があるの?
 コカコーラの失敗は、マーケティングが発展過程での失敗でしたが、キリンは、コカコーラの事例を知っていれば十分に避けられた事例です。
 逆説的ですが、そこにマーケティングを学ぶ価値が生まれます。