日本の半導体産業は研究開発費の割にどうして、利益率が低いのか?

JBPRESSの「日本半導体・敗戦から復興へ」
という記事を面白いと思いよく読むのですが・・・・


2013年11月5日の
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39083
「誰も気が付かなかった日本型ものづくり」敗北の真因」

はちょっと微妙だったかな。


 どうにも、結論が研究開発費を減らして、設備投資を増やせと言う風にしか見えない。


 正直、いまさら、ルネサスが研究開発費を減らし、設備投資を増やしても、製造技術でTSMCなどに勝てるとは思えない。
(現在、微細加工が必要なチップの生産はTSMCなどに外注のはず)


 問題点を指摘できたとしても、解決策が的外れのような気がする。


 本人も別の記事で書いているように、個々の会社でビジネスモデルが違うので半導体メーカーをひとまとめにすることにはかなり無理がある。


「無駄に多い研究開発費と少なすぎる設備投資
日本半導体は政府に助けを求める前にやるべきことがある」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38592


 設計のみファブレスと製造のみのファウンドリを混ぜるのは無理があるし。
 同じ半導体メーカーでも、設計がシンプルなDRAMメーカーと設計が複雑なCPUメーカーなどのロジック系を混ぜるのにも無理がある。
 また、他社が設計・開発したIP(IPコア)をどのくらい使っているかにも関係していると思う。


 経理上、IPの利用料はどこに含まれるのだろうか?
 無形固定資産か、どこかの経費だと思う。
 自分が権利を持てる研究開発委託したわけではないので、少なくとも、研究開発費ではないような気がする。


 ルネサスの主力製品を見ると、ARMコアと使っている製品もあるけど、ほとんどが自社のオリジナルCPU・マイコンのような気がします。
 しかも、NEC系、三菱系、日立系の三系統でしょうか。もっとかな。

 
 86系中心のインテルやAMDに比べると資源が分散しているし、個々の市場が小さい。


 例えば、インテルはCPU開発費に年1000億円研究開発費をかけても、年一億個売れば、一個1000円。
 しかも製品は少し価格が高いパソコン向けCPU。
 1万円のCPUなら価格に占める研究費の割合は10%となる。


 ルネサスの場合は、あるCPU開発費に年100億円研究開発費をかけて、年1000万個売れば、一個1000円。
 一見同じだけど・・・製品は価格が安いマイコン系。
 2000円のCPUなら価格に占める研究費の割合は50%となる。
 これは極端だけどね。


 当然、売上高研究開発費があがる。


 しかも、製品バリエーションもインテルなどと比べるとはるかに多い。
 必然的に、売上高研究開発費があがるのは必然かな。


 基本的に、IT産業とかコンテンツ産業とか生産・コピーコストが安い場合は「収穫逓増の法則」が露骨に働いて、利益率や額が大きく異なる。
 ルネサスの場合は、商品の種類は多い(開発費がかかる)けど、量と単価が低いために、結果として利益が出ない構造になっている。


 設備投資を増やし、研究開発費を削減しても、何ら改善にならない。


 その一方で、お客さんの以降を無視して下手に製品ラインナップを縮小カットすれば、売上は大幅に減る。
 このあたりが、ルネサスの経営改善の難しさ何だと思う。

 コンピュータは大は小を兼ねるので、大に合わせる形で細かいラインナップを整理統合し削除することが重要だと思うんだけどね。
 簡単じゃないけど。


 ガラパゴスは、外部が入って来れなければ、それなりに安泰。
 でも、いったん入られたら、瞬く間に駆逐される可能性がある。


 マイナーアーキテクチャでも生きていけるルネサスの得意とするマイコン市場も、ガラパゴス状態に近いかもしれない。


 もたもたしていると、ARMのマイコンが普及して、自動車などの組み込み系も支配されかねない。
 そうなると、倒産するのも時間の問題になってしまう。