インフレになっても輸出は楽にならない。 正しいのに間違っている? 〜論理の振りをして人を騙し、騙されない方法

 世の中には、インフレになれば輸出が楽になると言う人がいる。


 彼らのロジックは単純だ。
 ①「インフレになれば、通貨の価値が下がる」→②「通貨の価値が下がると為替レートが円安になる」→③「為替レートが円安になれば、輸出が楽になる」
 よって、④「インフレになれば輸出が楽になる」


 一見...正しいように感じられますが...


 ①の「インフレになれば、通貨の価値が下がる」は、正しい。
 ②の「通貨の価値が下がると為替レートが円安になる」は、正しい。
 ③の「為替レートが円安になれば、輸出が楽になる」は、正しい。


 よって、④「インフレになれば輸出が楽になる」は、正しい。


 三段?論法的には、正しいような気がしますが...
 しかし、④「インフレになれば輸出が楽になる」は、正しくない。


 理由は簡単。
 そもそも、インフレとは何なんでしょうか? どんなことが起きるのでしょうか?
 通貨の価値の下落ですが、物価の上昇、物の値段の上昇でもあります。


 インフレにより、円安になったとしても、円での物の値段が上昇しているので、相殺されるんです。


 面白いですね。一見、三段?論法的には、正しいような気がしますが。
 なんで、こんなことが起きたかと言いますと、『③の「為替レートが円安になれば、輸出が楽になる」は、正しい。』に問題があります。正しいと言うためには、円レベルで物価が上昇していないという前提条件が必要ですが、抜けている訳です。
 私の議論のやり方は、フェアではありませんね。


 三段論法で、論を展開する場合、前提条件があるにも関わらず満たしていないのに、正しいとしてしまう場合があります。
 ネットでの議論では、暗黙の前提としてしまう場合や、無知もありますので、注意が必要です。

【騙す、騙されない】
 人を騙す場合、前提を明記しないと騙しやすくなります。
 逆に騙されないためには、前提をメモなど書く必要があります。
 相手からの情報の洪水や相手の議論を聞いて理解しようとしている内に、非常に高い確率で、前提を忘れてしまいます。


【頭の良い人が陥り易い】
 頭の良い人は、自分の論理が正しいのか、他人の論理が正しいのか、確認します。
 結論に違和感を感じても、一見論理的に正しいので、自分を無理やり納得させてしまう場合があります。


 また、大学受験など学校での勉強は、前提を疑わない思考練習ばかりなので、もともと訓練されていない人が多いです。


 自分の経験では、自分より頭が良い人が陥るミスの多くは、これの様な気がします。


【アイデアを出す】
 頭だけで考えていますと、暗黙の前提に、思考が囚われてしまう可能性があります。
 前提をノートなどに記述し、図解し、それを崩してみると言うことが、時として重要です。


PS
 どうにも、近頃の日本の経済の話を聞くと、「デフレ=不景気」と単純にとらえている人が多い。
 80年代のインフレ時代を知らない、90年代の経済しか知らない人(若い人)には、とらえやすいけど、
 80年代を知っている身としては、なんか単純すぎないという気もしなくもない。

 世の中には、スタグフレーションと言う、インフレなのに、不景気と言うトンデモナイ怪物がいるんですが...
 資源価格が高騰する場合、スタグフレーションと言う怪物に襲われる可能性が大きい。