映画『ガリレオ真夏の方程式』感想:ネタバレレビュー 〜僕の夏休み

 原作版ガリレオ真夏の方程式は未読で映画だけの感想です。
 TV版ガリレオと言えば、女刑事が五月蠅いの定番ですが、映画版ではアシスト役に回り前面にはあまり出ないので、
 それ程、五月蠅くありません。
 良かったよかった。


 感想としては、僕の夏休み。
 まさに、夏休み映画でしょうか。

 正直、見る観点は大きく二つに分かれると思います。
 家族を中心にするのか、それとも少年を中心に考えるのかで。
 映画版は、少年中心ですね。小説はどうなんでしょう。


【あらすじ】
 オープニングは1997年(98年)の雪の日から始まります。
 いきなり中野?荻窪の歩道橋で、ホステス風のおばさんが殺傷されます。
 そして、川畑節子とその娘の、中学生の成実の間での会話シーン。
 新聞にはオバサンを殺した犯人として、仙波英俊が逮捕されます。
 お父さんには秘密よ。でお終い。


 まぁ、この段階で火曜サスペンス劇場常連ならば、動機や事件の真相は判ってしまいます。


 ときが流れて現代。


湯川学準教授(福山雅治)が向かったのは、手つかずの美しい海が残された玻璃ケ浦。
架空の地名ですが、映画で設定されば場所は、千葉県の南房総です。

磁気?電磁波?を用いた海底資源調査のアドバイザーとして、呼ばれたのですが、その道中の車内で、一人旅行をする少年、恭平とトラブルをきっかけに出逢います。


列車の中での、両親?親戚?との電話連絡を五月蠅い、マナー違反だと高年齢のおっさんに絡まれたのです。
まぁ、英語のクロスワードパズルをやっていた湯川にとっても五月蠅かったのですが・・・
 湯川先生は科学的知識を応用して問題を解決しました。
 少年は湯川先生に興味津々状態です。
(後で出て来るのですが少年の父は科学に暗い人みたいです)


 その後、海底資源開発に関する説明会に出席したのですが、反対派と推進派の不毛な説明会。
湯川先生は両成敗です。


 さて、湯川先生が、玻璃ケ浦に滞在中に宿泊した宿が、緑岩荘(ろくがんそう)です。
 そして、この緑岩荘は少年、恭平の親戚の家であり再び出会うことになりました。
少年、恭平は湯川先生に対して興味津々でいろいろと話しかけますが、先生は新聞を読んでいるなどの理由をつけて無視します。

 さて、この緑岩荘を経営しているのが、オープニングで出てきた川畑家です。
 元自動車会社でエンジンを開発しており、現在足の不自由な父重治。
 元ホステスで小料理屋で出会って結婚した節子。30歳で独身の娘の成実


 湯川先生意外のもう一人の宿泊客は、元刑事の塚原正次。

 湯川先生は旅館での夕食の後、地酒を飲みに街の居酒屋へ。
 少年、恭平と重治は旅館の外で花火をして遊びます。

 そして、次の日、塚原正次が海岸で変死体で発見されます。
 死因は一酸化炭素中毒死です。


 少年、恭平は、探偵気取りで事件のことを湯川先生に話します。
 なんやかんやと会話して、少年があまり理科が好きではないことが発覚。
 その後、現場近くの海に行きます。
 美しい海があるのは200メートル沖。
 少年が海を見たいけど、泳げないし、船に乗ると寄ってみれないことが発覚。


 その後、湯川先生、不毛な説明会をスッポかします。先生曰く、海底調査のアドバイザーなので説明会には出なくても良いとのこと。
 その替り、少年に科学(真実探究)の素晴らしさを啓蒙するために、テレビ電話可能な携帯とペットボトルロケットで海を見ることを少年と共に試みます。
 こっちを優先してしまうあたりが、変人と言われてしまう原因でしょう。


 試行錯誤する湯川先生と不毛な説明会が交互に映されます。

 ロケットは一回では200メートルでは飛ばず、試行錯誤しながら、最終的には海を見るのに成功します。
 このシーンは本当に良いですね。
 まさに少年時代の輝かしい夏休みという感じです。



【ネタバレ】











【ネタバレ】
 ホステスを殺した本当の犯人は、中学生の成実。
 中学生の成実は、本当は仙波英俊の子供で、成実を守るために自首。
 ホステスは、実の子供じゃないことをネタにして、お金を取るつもりで家に行ったけど、運悪く家に一人でいた中学生の成実と会う。
 幸せそうな家族への嫉妬からか、成実に全てをばらす。そして、家族写真を奪って出て行く。
 その後、殺してでも家族写真を取り戻そうとする成実に殺される。


【ネタバレ2】
 物語の中で、湯川は、真相よりも人生が大きく捻じ曲がる可能性がある人物のことを気にします。


 多くの人は、ヒロインである川畑成実( 杏 )のことだと思うかもしれませんが、これはミスリードです。


 川端家の秘密も殺人のトリックも、火曜サスペンス劇場常連ならば、動機や事件の真相は判ってしまいます。
 しかし、さすが人気作家らしく、別の秘密を用意していました。


 最後の落ちは、川端家父、重治が元刑事の塚原正次を殺す際に、少年、恭平に手伝わせていたこと。
 花火が建物の中に入るといけないからと言って、足の悪いは重治は、少年、恭平に建物を密封させ、一酸化炭素中毒で殺しました。
 つまり、少年、恭平を殺人の共犯にしたんですね。
 少年、恭平が事件の真相に気がつけば、罪の意識により、人生を大きく捻じ曲げてしまう可能性があります。
 湯川先生は、そのことを一番気にしていたんですね。


 少年がそのことに気がついたのは、意外に早かったのですが・・・・
 湯川先生は少年と共に秘密を持ち続けること(答えを探し続けること)を約束して物語は終わります。


 夏休みに起きた楽しい思い出もあったけど、つらく悲しい少年の少年の成長物語でした。 

 湯川先生は、1997年の事件に関しては、証明できないこととして、そのままにしてしまいます。
 また、現在の事件に関しても、事故死と死体遺棄での処理を黙認した感じですね。


【おまけ】
 元刑事は何のために来たのか。映画の中では語られませんでした(小説ではどうなんでしょう)。
 たぶん、暴き立てて、騒ぐつもりはなかったのではないでしょうか。
 基本的には、殺さなくても済んだ事件だったような気がします。


 そのことを犯人に言っても良かったのでしょうが・・・・言わないのが湯川先生の優しさでしょうか。
 父を親は家族を守るつもりで人を殺しましたが、
 元刑事が暴くつもりがなければ、家族を守ると言う点がなくなり、単なる殺人者になるだけですから。


 娘の本当の父親は、娘を庇うために刑務所へ。
 まさに凄い献身ですね。
 このお父さんは、ある種張り合って、殺人でしょうか。
 悲しい競争ですね。


 元刑事が大変気の毒ですが・・・・