日本の半導体産業衰退・敗北の単純な理由

 衰退・敗北の原因は沢山あるのですが、その一つのネタとして。 


 90年代はパソコンの時代、2000年代は携帯の時代、2010年代はスマホの時代ですが・・・・
 日本の半導体業界は、どれだけ、その市場に商品を出したのか?
 勝つことが出来たのでしょうか。


 エルピーダの倒産で、DRAMはそれなりに話題になっていますが。
 今までとれていた市場が取れなくなったと言う点にしか注目していない。


 DRAM以外の市場に目も向けたらどうなるでしょうか。
(高信頼高価格の大型機向けのDRAMに対して、PC向けDRAMもある種、低価格低品質と言う点で戦略が異なる新市場なんですが・・・・)
 ハッキリ言って、90年以降は新市場で勝てていない。
 中途半端にしか商品出してないし、そして当然、勝ってもいない。
注意:東芝のフラッシュは例外です。




 例えば、グラフィックのチップ。
 日本メーカーも色々と出していましたよ。でも、今、市場で頑張っているのはNVIDIAとAMD(元ATI)。あとPowerVRかな。
 近年、3DS向けが頑張っていますが、それ以外存在感ゼロ。
 FPGAなどもそう。
 無線系も酷い。
 80年代からあったCCDカメラは強いのですが90年代に伸びたCMOSカメラも弱い。

 90年代から伸びた市場では存在感なし。
 円高とか関係なし。アメリカの方が人件費高いんだから。


 日本メーカーは、コンデンサなどの電子部品では存在感はあったのですが、半導体チップとなりますと存在感なし。
 90年代から、PC向けメモリはサムスンなどに負け始めました。
 その一方で、急速に伸びた新しい市場では、携帯やスマホの世界ではまったくもって存在感なし。
 アメリカのクアルコムブロードコム、台湾のメーカーが存在感を示したのとは対照的です。


 たぶん、日本メーカーも、PC向けや携帯向けの半導体チップを多少は作っていたはずなんですが・・・・見事に負けてしまいました。
 これほど、新市場で勝てないとさすがに売り上げは頭打ちでしょう。


 日本メーカーもまったく手を出していないわけじゃないないと思うんですよね。
 でも、なんというか中途半端。


 例外的なのが、東芝フラッシュメモリ。自社で基本コンセプトや技術を開発して、会社をかけて勝負した。
(発明者と揉めたのは残念だけど)
 そして、結構いい勝負している。
 日本だから負けるのではない。


 日本の大企業の内部に入ると判るんですけど、中小シェアの企業が集まって、がたいの大きな大企業になっている感じなんですよ。

 対して、アメリカは、大シェアの専業中規模企業がある感じ。


 会社規模だと、日本企業>アメリカ企業なんですけど。
 アメリカは専業会社なので。
 商品単位・セグメント単位で見ると、アメリカ企業>日本事業部なんですよね。


 そのため、人材の量・資金の量共に勝てない。
 戦っている現場は、中小企業VS大企業ですよ。
 開発している人材の質は、それ程変わらなくてもね。

 
【新市場の難しさ】
 とは言っても・・・・新市場開拓は難しい。


 巨大な技術力、資金力を持つ、インテルすら、携帯・スマホ時代に乗れていない。
 マイクロソフトもそう。
 PC時代の遺産で食べている状況です。


日本企業だけが新市場を開拓できない訳じゃない。どこの国の企業も似たようなものです。


 コンピュータと言う点では、同じでも、もはや別の産業に参入するくらいのものなのでしょう。
(そう考えると任天堂は凄い)


 私が、昔大企業で働いていた頃、年配の人たちは、大型機の発想で、PCとかを考えるんですよね。
 同じコンピュータなので転用できる点も多いのですが、それをここで当てはめちゃまずいでしょということも多かった。


 PCにはPC向け人材をトップに、スマホ時代には、スマホ向けの人材をトップにする必要があるんだけど。
 まぁ、そんな人材はなかなか居ないということなのだろう。
 Appleは例外中の例外なんでしょう。
 STマイクロエレクトロニクスも、携帯の波にうまく乗れた会社ですね。


 コンピュータの世界は、ドッグイヤーで10年が普通の産業の40年相当でしょうか。


 アメリカの場合は、リストラなどで技術を持った人材がいったん外に出て、新規市場に向いた別の人材を中心に集まることにより、再組織化して、市場に対応するのでしょう。



【企業ではなく、国】
 とは言っても、PC時代、携帯時代、スマホ時代の覇者は、なんやかんやでアメリカなわけです。


【新市場を見ている人は誰か?】
 新市場を見ている人は誰でしょうか?
 企業の場合、役割に応じて仕事をしています。


 基本的に、与えられた役割以外の仕事をしてはいけません。
 そして、多くの場合、与えられた役割をするので精一杯。


 では、新市場を誰が見ているんでしょうか?
 企画部?
 マーケティング部?
 たぶん、そうでしょうね。
 半導体産業は、市場の変化が激しいので、マーケティングが重要なんですね。


 日本はマーケティングが弱い。
 サムソンは、優秀な理系・文系人材をマーケティングの人材にするそうですが・・・
 文系だけだと、技術トレンドを理解できないからでしょう。
 日本で、マーケティングの学問の地位は低いですね。
 経営学部の中で一番偏差値が低いとの皮肉も時より出てきます。


 とは言っても、単純にマーケティングを上手くすれば良いともいえない。
 マーケティングは所詮過去だから。


 新しい市場は、存在しない場合が多いので、現在存在しない市場をマーケティングしようがない。
 もしくは非常に小さい。


 一方、市場が大きくなってから参入なんてやっていたら、完全に遅れるだけ。


 通常のマーケティングでは、なかなか上手く行かない。

 
 潜在的な市場を調べつつ、 市場創造型で行くしかない。


 技術者が夢を語ることが重要だと思う。
 技術でどんな社会・生活を作りたいのか?
 新しい社会・生活のためには、どんな技術が必要なのか?


 経営者はカネ儲けで頭が一杯ばかり。
 やることはリストラと社員の賃金を下げるぐらい。
 技術者は、今のノルマをこなすので精一杯。

 
 夢を見ている時間はないかな。

PS
 関連記事です。
[http://d.hatena.ne.jp/creativeability/20131111/1384184626:title=パナソニック半導体事業縮小 〜日本半導体衰退の原因]