ファブレス・ファウンドリ・EMSの違いとメリット 〜なぜ、ファブレス化が進むのか

 ファブレスファウンドリ・EMSなど、近頃新聞でよく見る単語ですが、どんな意味なのでしょうか?


 近年、社会的・ビジネス的な役割・領域が大きく変化してきました。
 しかし、ネットの記載を見ますと、アセットライト(小資本、資本効率面)だけの記述が多く、
 他のメリットなどについて、あまりしっかりと書かれていないので、書くことにしました。


 また、現在の日本の家電メーカーや半導体メーカーは、ファブレス化を選択していますが・・・・どうなんでしょうか。


ファブレスファウンドリ】
 ファウンドリ(foundry)もともとは鋳物工場という意味ですが、IT業界では半導体の生産請負業のことを言います。ファウンドリではなく、ファブ(FAB)と言う人も居ます。
 ファブ(fabricationの略)でして、製作という意味です。この場合は生産工場という意味が間が強いです。
 レス(LESS)は、なしなので、ファブレス工場なし、工場を持たないということです。
 じゃあ、ファブレスの会社は何をするかと言いますと、企画、設計と販売ですね。


 基本的に、昔からある業界なのです。
 ビジネスモデルとしても、洋服業界などは、昔から販売とデザインと製造を分けているところが多いので、別に新しいものではありません。


 日本で言いますと、ハドソンはPCエンジン向けのチップセットを開発しましたが、工場は持っていませんでした。今でいうファブレスに近いわけです(単純な請負かもしれませんが)。


【設計・デザインだけで儲かるのか?】
 単純な設計ならいざ知らず、通信など使われる複雑・高度な半導体の場合、価格の4割〜6割をファブレスが取ります。


 洋服とかでも、イラストが付くだけで無地に比べて、値段が数倍になりますからね。
 高額商品になればなると、デザイン料の比率が高くなります。


 アメリカの半導体シリコンバレーというイメージがありますが、近年は、ファブレスメーカーが全米中に出来ていますね。


【EMS】【ファウンドリ】
 EMSもファンドリも共に製造請負の工場です。
 EMS(electronics manufacturing service)は名前で判りますように、電化製品の組み立ての会社です。つまり、電子部品などは、昔は作りませんでした。
(今は大型化して、電子部品まで作るようになりました)
 ですから、人件費が安い中国・台湾などを中心に発展しました。
 ファウンドリは、もっぱら、半導体の製造請負です。半導体の企画・設計のファブレス(工場なし)に対して、ファウンドリ(ファブ・工場)です


【EMS・ファウンドリ側のメリット】
①市場変動の吸収
 個々の企業業績の幅は、市場よりも大きい場合があるし、小さい場合があります。

 市場自体の2%UPなのに、ある会社Aは10%ダウン、別の会社Bは10%UPというのがありえます。
 携帯電話やスマホ、デジカメなどが判り易いですね。

 A社は製造能力が余り、B社は不足するかもしれません。A社はリストラで赤字、B社製造能力不足で商機を失っているかもしれません。
 しかし、両者を足せば実は過不足なしになるかもしれません。
 そして、A社もB社も幸せになれます。

 EMS・ファウンドリは、複数の企業と契約することにより、市場変動に近い需要変動にすることができます。
 つまり、普通の生産子会社の工場よりも経営が安定する訳です。

 これにより、従業員の教育・投資などがスムーズに行く可能性があります。


②一括購入による部品価格の値引き 一言、EMSと言っても、材料・部品をEMSサイドで購入しているところもあります。

 EMSサイドで購入する場合。
 A社、B社個別購入よりも、A社、B社まとめて購入した方が、値引きできる可能性があります。

③巨額の投資が出来る
 一社では投資過大になる投資でも、複数社の需要を集めることにより、投資可能になる場合があります。


 結局のところ、EMS・ファウンドリ側の強さは、①②③のメリットによる強さなんですね。


【EMS・ファウンドリへの発注側のメリット】
①工場を持たなくても生産できる。 当たり前ですね。
 そのため、工場の設備投資費など巨額な資本が必要ではない。

②一括購入による部品価格の値引き 製造コストが下がることにより、発注側もメリットを受ける可能性があります。


ファウンドリ・EMSの方がレベルが高い
 現在、EMSの方が巨大化しています。製造技術者の数もEMSの方が多くなり、レベルも高くなってきています。
 半導体工場の微細度においては、一部企業を覗いで、ファウンドリの方が上と言う状況があります。


④市場のブレに対応でき、在庫も減少 
 多くの場合、最終製品の市場の需要の変動よりも、好調・不調の会社に分かれるため、最終製品を作っている会社の供給の変動は大きいものとなります。
 
 EMS・ファウンドリの生産能力は、巨大ですので、発注の増加にも対応できる可能性があります。
(対応能力やするかしないかは、会社の能力や関係により異なりますが)
 その結果、収益性が増します。
 また、在庫を多く持つことを抑制することが出来ます。

 生産減少した場合の対応も容易になります。
 リストラ費用なども浮かせることが出来ます。


 また、生産される製品だけではなく、部品自身も相殺され、平均化されるために、無駄がなくなります。


ファウンドリから支援を得られる
 ファウンドリはファブレスがないと成り立たない。ファブレス企業の増加・繁栄=ファウンドリ市場の拡大になります。
 そのため、ファンドリは、自社を利用してもらうためやファブレス企業発展のために、開発をしやすくするための支援など、さまざまなサービスを提供します。


 この点を見ますと、ファウンドリ=単純な請負ではないことが判ります。


 ファウンドリがファブレス化を進めていることが判ります。


【EMS・ファウンドリへの発注側の注意】
 どうつくるかでの差別化は困難です。
 何を作るかの勝負になります。
 つまり、マーケティング力や企画力。
 半導体なら、さらに設計力の勝負になります。


 この辺が日本メーカーの一番苦手な点ですね。
 自分で判断せずに、他者がやったからうちもの横並びの意識の会社が多いです。
 横並び経営をしていない会社が好調なのも偶然ではないでしょう。


 工場は強いけど、企画は駄目な会社が、ファブレスと叫んだところで、利益を上がられるわけではありません。


 では、日本のメーカーは、マーケティング力や企画力、設計力が優れているのでしょうか?
 設計力は優れていますが・・・・
 マーケティング力や企画力は、極端に高くありませんが、あまり高くありません。
 経営と絡んだときに、マーケティング力や企画力が落ちると言うのが正確かもしれません。


 日本の大企業を見ますと、社長は何の専門家なのだろう?という気がします。当然、経営の専門家なのでしょうが。
 業界に全てに精通していることはありえず、判断ミスの可能性が高くなるはずです。 


 どうにも、経営陣がボトルネックになって、パフォーマンスが落ちているので、ファブレス化しても利益が上がる気がしないのですが・・・・
 結局、価格が高めの日本向けの商品で儲ける構造になるのでしょう。