日本のデフレの原因は賃金デフレ? 〜サービス残業は究極の賃金デフレ

デフレに関して考える前に、インフレ(物価上昇)について考えてみましょう。


【インフレの種類】
 インフレに関しては、大きく分けて3種類あります。
 需要インフレと供給インフレ、貨幣要因インフレです。
 需要の急増などに価格の上昇は、需要インフレです。
 貨幣インフレは、政府の財源を税金ではなく、紙幣を刷って(国債)ごまかした場合に起きます。戦争後のドイツのハイパーインフレなどは、典型的な貨幣インフレです。
 アベノミクスは、貨幣インフレを引き起こそうとしているわけです。


 供給インフレとしては、以下のようなものがあります。
・賃金インフレ
 生産性を上回る賃金の上昇。
・コストインフレーション
 石油価格の上昇など。
・輸入インフレーション
 輸入価格の上昇など。

 上記以外にもありますが。


【デフレの場合は・・・・】
 インフレの逆ですね。

 基本的に輸入により安い商品が入ってきた場合は、物価の下落になります。
 そのため、グローバル化がデフレの原因と言われますが、グローバル化は、どこでも起きているので、日本だけがデフレになる理由としては弱い。


 日本のデフレの場合は、一つの原因ではなく、複数の原因が組み合わさったものでしょう。


 需要不足であり、供給過剰であり、そして、賃金デフレです。
 日本は平均賃金自身が低下しているので、賃金デフレが起きていない方がおかしいですね。
(因果関係は、円状になる場合があるので、その場合、最初は、何かの結果だったのに、原因になってしまう場合がある)



 賃金デフレが起きた原因としては、①企業が賃金を抑え、内部留保を増加させている②非正規・低賃金パートの増加③正規・非正規の格差④サービス残業などがあると思います。


日本のインフレ推移


インフレ率(年平均値)の推移(1980〜2012年) - 世界経済のネタ帳


0%のラインが見えませんが・・・・
バブル崩壊後直ぐに、デフレ(マイナス物価)に突入したのではなく、98年以降に突入したのが判ります。


ポイントは、98年あたりに何が起きたかです。
金融危機貸し渋り)と労働の自由化(派遣緩和)、賃上げ凍結(利益を増やしても賃金を上げない)ですね。


他国との比較
インフレ率(年平均値)の推移(1980〜2012年) - 世界経済のネタ帳


内部留保
 いつから、そんな時代になったのか。
 97年の金融不安と貸しはがし、98年頃のトヨタの賃金凍結が大きいと思います。
 98年ごろのトヨタは売上、利益を増加させているにもかかわらず、賃金上昇を凍結させました。
 その結果、多くの企業がトヨタのマネをして、利益を増加させたにも関わらず、賃金を上昇させないということなりました。


 リーマンショック前の時代、企業はバブル時代よりも多くの利益を上げているにも関わらず、給与水準がバブル以下なのが特徴的だと思います。


サービス残業
 サービス残業は無給ですから究極の賃金デフレですね。 
 サービス残業自身は、昔からありました。
 しかし、90年代後半、2000年代前半にかけてほぼ倍になったとのデータがあります(正確な時間は忘れました)。
(ちなみに、企業が国に申告する労働時間にはサービス残業は含まれていませんので、労働者に聞き取るタイプの統計調査の方を見る必要があります)


 なんとなく、日本がデフレ経済に突入した時期と重なります。


 連合の調査ですと、月約30時間、年間360時間だそうです。さすがに、これは、過大だと思いますが・・・・

 90年以降、左派勢力・労働組合が衰退し、労働者側の交渉力が低下したのが一因でしょう・・・・
 もっとも、労働組合自身、非正規保護の意識がなく、非正規を犠牲にして世紀を守ろうとするなど、意識が低い組織でしたが。


 発展途上国などでは、ストが多いため、賃金インフレなどがたびたび起きます。
 日本以外の国は、スト連発です。


アベノミクス
 賃金上昇を求めたのは、当然と言えば当然の結果です。
 従来の政策は、企業保護ばかりの政策が多かったので、驚きでした。
 非常に評価できる点です。

 もっとも、小売なんて75%くらいが非正規です。しかも、非正規は低賃金。
 高賃金の正規社員のみに限定されるのが悲しい点ですが・・・