パナソニック大赤字の原因:財務諸表を見る際の注意 〜のれん代と繰り延べ税金資産

 シャープに続いて、パナソニックが大赤字になりました。
 しかし、シャープの赤字とパナソニックの赤字は少し状況が異なります。


 もちろん、パナソニックは売上が減少しており、業績は芳しくありません。
 しかしながら、営業利益は、とりあえず800億円の黒字なんですね。
(売上が減少している中で、売上高の1%の黒字。努力なのか操作なのか判断できません)
 それなのに、約7000億円の巨額な赤字。
 どうしてこうなるんでしょう。
 俗にいう、営業外損益というものですね。
 営業外損益には、いろいろなものがあるのですが、
 その多くは、バランスシート(B/S)上の資産がおかしくなり発生します。
 ここで、問題になるのが、のれん代」と「繰り延べ税金資産」です。
 

 赤字の内訳をもう少し細かく見てみましょう。
 のれん代の減損で、2378億円を計上しています。突然、これ程巨額の資産が消滅したわけです。
 次に繰り延べ税金資産ですが・・・
 ここで何と、4125億円もの取り崩しをしています。 
 この二つで6000億円以上です。


 この「のれん代」と「繰り延べ税金資産」は、たびたび企業を大赤字に陥れます。
 「のれん代」と「繰り延べ税金資産」が、どの程度あるかは、ある程度、企業のさじ加減で決まってしまうので、良く見せたい会社はこの部分を多く計上します。
 株式を買う場合は、のれん代」と「繰り延べ税金資産」が多い会社は注意ともいえます。

 オリンパスの財務操作は「のれん代」関係ですし、数年前の日立の大赤字は「繰り延べ税金資産」関連です。
 あと、ソニーの大火事も税効果会計でしたね。


のれん代
 のれん代は、企業買収(M&A)などをした場合、企業が持っている資産と買収差の差額です。
 資産1000億円の企業を2000億円で買収した場合、差額の1000億円が、のれん代になります。
 のれん代=ブランド代みたいなものです。無形資産とも言いますが・・・・

 もっとも、自社のブランド代は、BSに乗らないのに、他社を買収した場合には、資産として乗るとは不思議なものです。


 パナソニックは、三洋と松下電工を買収した際に発生した際に資産計上した「のれん代」を減損しました。


 ソーラー722億円、電池746億円、携帯910億円

 なんだかんだの合計で、のれん代の減損で、2378億円を計上しています。

 太陽電池や電池、携帯が不振なので、ブランド価値(無形資産価値)無いよねという訳で減損になったわけです。


【繰り延べ税金資産】

繰延税金資産とは何でしょうか?
私自身、判り辛く頭を抱えてしまいます。

税効果会計を用いて、前払いした税金がいずれ戻ってくるという想定のもとで、貸借対照表に計上されるものを繰延税金資産といいます。
逆に支払を猶予してもらっているが後で支払う想定になっているという想定で貸借対照表に計上されるものを繰延税金資産といいます。

出典:http://www.nsspirit-cashf.com/yougo/yougo_kurinobe_shisan.html


 繰延税金資産の取り崩しとは、要するに、払った税金が戻ってくるつもりで、繰延税金資産にしたけど、戻ってこないことになりましたということです。


 日立など大企業が大赤字を計上する場合、多くの場合、この「繰延税金資産」が関係してきます。
 逆に、りそな銀行など繰延税金資産」が増えることにより最終利益が増える場合があります。


【過去の経営陣の後始末】
 結局、のれん代にしろ、繰り延べ税金資産にしろ過去の経営陣が、現実以上に積み上げたものを、減損させたものです。
 右肩上がりの売上予測をした。その時は正しかったのでしょう。不確定だった未来が、現実になった時、いっきに歪みが爆発したと言えます。
 膿を出したと言えるでしょう。


 もっとも、ここで膿を出すと、次の年は、財務が急に良くなったように見えます。
 V字回復したように見えるわけです。


 売上が実際伸びていなくても、のれん代とか繰り延べ税金資産の積み上げで、利益を出す。なんてことをしては最悪ですが。


【売り上げ減少への対応】
 パナソニックの売り上げが減少して、経営が苦しいのは変わりません。
 たびたび書いていますが、スマホや携帯は今やもっとも身近な電化製品です。ここを抑えられるかどうかで、ブランドに認知度や価値は大きく異なります。
 別の言い方をしますと、スマホが売れれば、テレビやほかの家電も売れます。
 にもかかわらず海外でのスマホ撤退など、目先の収益改善に囚われて中長期的な戦略がとれていないような気がします。
 サムスンやLGが携帯やスマホに力を入れるのとは対照的ですね。
 大企業の場合、特定部門の戦略的赤字があっていいと思うのですが。
 独立採算の事業部制の問題ですね。
 成熟製品の事業は、独立採算にして。
 リスクの大きい成長商品は、赤字覚悟で社長直轄にしても良いと思うけどな。