【ほぼ効果がない大規模化】
良く大規模化が叫ばれていますが、単純に大きくしただけでは効果は微妙だと思われます。なぜなら、農地が本土より遥かに巨大(4倍から10倍)な北海道ですら、国際競争力がないから。
【牛乳のコスト構造】
昔拾ってきたグラフです(著作権違反ですが...)。
既存のビジネスモデルのまま拡大しても...コスト削減効果は非常に怪しい。少し考えてみよう。
機械化、大規模化により減るのは、どの項目だろうか。
労働力だろうか? 仮に倍になったら、半分になるとしましょう。
減価償却は、機械化による増加と、効率化による減少があるが、大幅減になるだろうか?
大甘で良くて半分だろう。
流通飼料費や牧草費などは1頭当たりの投入量でコストが決まる。規模が拡大しても、削減効果は小さいと考えられる。恐ろしいことに、流通飼料費と牧草費のエサ代だけで、NZのコストを超えている。
北海道十勝の農家は平均39ヘクタール。NZが平均、100ヘクタールぐらいらしい。
3倍にしたとしても、NZに勝てるとは思えない。
単純に今の高コストなビジネスモデルのまま規模を拡大しても勝てない。
【なぜNZは安いのか】
実は、NZは放牧方式なのでコストが安い。
手間暇かけていないのだ。
北海道でも放牧方式で、大幅なコスト削減をしたらしい。
では、なぜ放牧方式にしないのか?
農協が儲からないからです。
あと自給率に対する妄想ですね。
放牧方式だと、単位面積当たりの生産量が下がります。同じの土地でも取れる牛乳の量が減る。自給率的にはマイナス。
国際競争力を上げて、自給率を上げるのではなく。
国際競争力を上げるためには、自給率を下げないといけない。
そもそも、コストが半分になり売値が半分になれば出荷額は半減する。
国際競争力を上げて出荷額を維持するのではなく、国際競争力をつけると出荷額が下がる。何よりも、農家も減る。
だったら、農家を維持し、出荷額を維持するために、価格競争力を失わせるのが日本の農政。
【米】
北海道のコメ農家は、だいたい5〜10ヘクタール。それに対して、本土は約1.3ヘクタールくらい。北海道の農家の方が大規模ですが、コストは3割くらいしか削減できていない。
仮に、本土の農家の面積を5倍にしても、3割くらいしか削減できないので、競争力はない。やはり、単純に今の高コストなビジネスモデルのまま規模を拡大しても勝てない。
米の生産コスト。物財費の多さが目につくだろう。ここを削減しないと話にならない。
労賃をただにしても、物財費だけでコスト負けしているのだ。
【海外でも農家の数は減っている】
日本では、農家の減少=農業の衰退・競争力不足と関連付けるが、必ずしもそうではない。
競争力があるアメリカでも、オーストラリアでも減っている。ヨーロッパのドイツ、イタリアでも農家の数は減っている。
これは生産性の向上に伴い第1次産業に従事する人が減るという産業構造の変化の傾向があるためだ。
また、経済に占める農業の比率も低下する。
これに逆らうことは、正直言って危険だ。
【農家が減っても...】
農家が減ることは、農村を荒廃させる。
しかし、農産物の価格が下がれば、農産物の加工業は生き残ることは出来る。
同じことをやっても、後手後手と先手先手では大違いだ。現状のままでは、全滅だ。
北海道は、放牧方式を導入し、労働時間とコストを削減する一方。農場での乳製品の作成と販売などに収益源を移す方が良いと思う。
米に関しても、なぜ費用が3割しか下がらないのか、原因を突き止める必要があるだろう。温暖化・品種改良により、北海道のコメの質は今後も上がり続ける。
美味しいコメに、美味しい乳製品、美味しい魚。
北海道の農業は、やり方次第で十分生き残れる。
西日本のコメは難しい。現状の延長線上の野菜・果物に活路を見出すしかないような気がする。