なぜ、基盤産業は地域にとって重要なのか? 〜TPPと農業

 そもそも、基盤産業とは何なのでしょうか?
 さまざまな定義があるでしょうが、早い話が地域外からお金を持ってくる産業です。


 代表例が、農林水産であり、工場であり、観光です。
 農作物や工業製品を地域外に売って、お金を得るわけです。
 観光の場合、観光客が来て、地域にお金を落としてくれるわけです。


 上記のもの以外でも、コンテンツ産業、IT産業や金融業、研究所、本社、デザイン、広告業、なども基幹産業となえます。
 また、小売業、病院や大学なども場合によっては、基幹産業になります。 
 典型例が東京ですね。東京は農林水産も工場もありませんが、上記の産業により日本中や世界中からお金を集めています。


 一般的には、基盤産業にはなりませんが、地域外への通勤も基盤産業みたいなものです。
 埼玉ですね。
 フィリピンでは、出稼ぎ・メイドが基盤産業ですね。
 建設業は、あまり基盤産業ではないのですが、国からの補助金がもらえることにより、基盤産業みたいになってしまう地方が多いです。
 基盤産業の一つが役所などもありえます。

 老人ホームや介護なども、同様の理由で基盤産業のように振舞う場合があります。
 生活保護も、基盤産業の一つになっている地域があるかもしれません。


■基盤産業と人口
 基盤産業の従業員が1人増えますと、非基盤産業の従業員が5人ほど増え、人口が10人から12人増えます。

 まぁ、凄い効果ですね。

 基盤産業の従業員が1000人いれば、1万人の街の人口が維持されるわけです。(賃金の高さはいまいちかもしれませんが)


( もちろん、地方の場合、地域外で買い物やサービスを受けたりするので、10倍よりは落ちるかもしれません。)


 なんで、こんなに効果があるかは、逆のことを考えると理解しやすいかもしれません。
 地域内の人が買い物をすると商品そのものの代金やガソリン代としてお金が地域外に流れます。
 基盤産業がないと、金が外に出て行くばかりで、地域が金欠になり、ビジネスが成り立たなくなるわけです。
 人々が消費すると地域が金欠になるので、景気の天上になるわけです。

 基盤産業があり地域のお金の出入りが(域際収支)均衡していれば、金欠にならないので地域内景気もどんどん良くできるわけです。
 そのため、新しい雇用が生まれます。


■TPPと農業

 TPPの影響で、北海道の酪農は壊滅的なダメージを受けますが・・・・・
 酪農者が1万人減れば、10万人人口が減る危険性があるわけです。



■農村はなぜ人口が減るのか?
 じゃあTPPを無くせば、問題ないかと言いますと、そうではありません。


 アメリカにおいて、農業従業者数は全人口の2%以下しかありません。
 機械化・生産性向上により、農業従業者数が少なくて済むんですね。
 その結果、農業だけですと、10%くらいしか農村には住めません。


 日本も同様です。昔は農林水産の人口は30%以上ありました(経済波及の数値は小さい)が、今は生産性向上により少人数で済んでいます。その結果、どうあがいても農村の人口は減るわけです。


 しかしながら、農業・農作物に魅力や競争力があれば食品加工業や観光により農村人口は増やせます。
(正確には減少を減らせる)


 農業単体での雇用は減っても、関連産業を発達させることによりある程度雇用を維持する作戦です。


 ダメージをゼロにはできないが、ダメージを減らすことは出来るわけです。


 最悪なのが、日本の農林水産政策ですね。
 林業は従業員を維持することを目的としていたので、生産性向上策・機械化による従業員の減少を認めることが出来ず、結果として高コスト体質になり、下流の産業である木材加工産業も衰退させてしまいました。
 共倒れですね。
 林業の従業員減少を容認できれば、加工産業の雇用をある程度維持できて、最悪の共倒れは回避できた可能性があります。




■生産性向上と従業員数
 生産性向上の結果、基盤産業の従業員数が減り、地域の人口が減るのは農業だけではありません。
 鉄の室蘭や石炭の釧路などは、自動化により従業員が大幅に減り人口が減りました。


 夕張は石炭産業があろうがなかろうが、人口が減るわけです。


■北海道の酪農地帯はどう生きる?
 ありきたりな手しかありません。
 6次産業かなり+観光です。


 前提として、大規模化・放牧化によりコストを大幅に下げるしかありません。

 当然、酪農家の数は3分の1になるでしょう。
 その代り、乳製品の加工と観光に運命をかけるしかありません。
(現状の農協の体制では無理ですが・・・・)

 酪農家1000人=1000人
の現状から、
 酪農家300人+乳製品加工150人+観光150人=600人
 への変化です。


 人口は1万人から6000人に減りますが・・・・全滅よりましです。


 もちろん高品質化の手もありますが、酪農以外の加工や観光を増やさないと人口の維持は難しいでしょう。


 最悪なのは、高い牛乳価格を維持→加工製品の価格が高い→海外に敗北→ただ単に乳価が高いので高級品も低価格品も加工産業が発展しない。
 乳製品に魅力がないので、観光も発展しない。
 という関連産業共倒れシナリオです。


 一番良いのが、低価格化・高品質化→乳製品消費拡大→乳製品への関心拡大→観光拡大
 というシナリオです。
 チーズとか、価格が下がれば、まだまだ消費は伸びると思います。
 低価格品が売れれば、高品質品の消費も増えます。


保護主義の限界
 アイダホはめちゃくちゃ田舎でポテトで有名ですが。
 ハイテク産業でも有名です。
 なぜ、ハイテク産業が発展したかと言いますと、ポテト王がポテトの次の産業として、ハイテクに投資したからです。


 日本の遅れた地方の場合、農業の次の産業を育てるのを失敗しました。
 特に北海道ですね。

  
 本来は農業の次の産業に投資すべきでしたが、保護主義により農業にお金・税金をつぎ込みました。


 その結果、当然、次の産業を育てることにお金が回らず、現状の悲惨な状況です。