法人税が下がると、国際競争力アップ?

 現在、法人税を下げることを議論しているそうです。そのときに出てくる言葉が...法人税を下げると競争力がアップするという話です。
 正直、どういうメカニズムで、法人税を下げると競争力がアップするのか?というのが、かなり不明で、因果関係やメカニズムをキッチリ説明しているところが、ちょっと見つからない。
 EUでは法人税を下げて、税収が上がったという話もありますが、一種経験則みたいなものなのだろうか?
 法人税を減らすと、投資が増える?どうなんだろう。


【間違い】
 法人税率を下げると、給与を多く出せるとか、研究開発費を増やせるという人が居るけど、これは怪しい。
 法人税率は、売上にかかるのではなく、人件費や研究開発費を引いた後の利益にかかるからだ。


 利益が増えたら、社員に還元しますという会社ならまだしも、ほとんどの会社は、微々たるものしか還元しないので、あまり関係ない。



【ちょっと考えてみる】
 単純に法人税が下がって何が嬉しいかというと...①内部留保できる資金が増える②配当に回せる資金が増える。


 ①内部留保できる資金が増える
 これは企業にとっては嬉しい。銀行からお金を借りると、不景気時に貸し剥がしを食らう可能性があるためだ。これは安定的な資金が必要と言う意味、税金とは本質問題または解決手段ではないような気がする。


 ②配当に回せる資金が増える
 単純に配当の原資が増えて、投資家は嬉しいだろう。経営者から見ても、努力なしで、業績アップ。


【どの程度嬉しいか】


 もっとも、税率が40%から30%に下がった場合、自由にできるお金が17%増えるけど(60%から70%に増える)、税収は単純に考えると、25%減少する。同じような税収を得るためには、企業の経常利益が33%は増えないといけない。


 税利率を0%にすれば、タックスヘブンになり、金融業の誘致は進むだろう。その結果、雇用が生まれるでしょうが...製造業はどうなんでしょうか?



【本社や地域拠点の位置を決めるのには重要】


 法人税率が低い地域に置けば、配当を増やせる。
 そのため、本社や地域拠点の位置を決めるのには重要になる場合がある。


 香港やシンガポールなのどの都市国家は、人口が小さく市場としての魅力は小さいです。
 そのため、何の工夫もしなければ、本社や地域拠点を置いてくれません
 一方、本社や地域拠点が置かれれば、法人税率は取れなくても、雇用は生まれます。
 また、各種情報や人が集まりますので、地域拠点として生きて行く都市国家としては、絶対重要なことです。

 本社や地域拠点を置かせたいために、法人税率を低くしています。


【起業にはプラス】
 同じ利益であっても、法人税率が低い方が配当金額が多くなります。
 投資家から見た場合、リターンが多くなるわけです。


 法人税率が低い方が、ハイリスク・ハイリターンのベンチャーへの投資が容易になります。


【設備投資不足が問題なの?】
 今製造業は投資不足なのでしょうか?
 確かに、日本の半導体や液晶は韓国・台湾に投資で負けました。しかし、それは...法人税減税では解決しません。そもそも利益が出ていないで、赤字なのですから。あまり関係ないような気がします。
 ヨーロッパやアメリカでは、貯蓄不足・設備投資不足が起きましたが、日本では、そのような状況は起きていません。
 不足しているのは、設備投資ではなく需要です。


法人税と消費税】
 海外の企業は、法人税が少ない代わりに、消費税をガッツリ取られます。
 要するに、赤字による法人税逃れが出来ない。


 法人税率を下げて、その分消費税で取るというのは、税収の安定化やベンチャーの育成などの点からプラスですので、セットなら話が判るのですが...


 日本みたいに、法人税だけを見て、企業の納める税金が少ないみたいな議論は、誤魔化しですね。