インセンティブにおける問題

 こちらこちらインセンティブについて書かれています。私もそれらにインスピレーションを受けまして、一言、二言。

【評価が難しい問題】
 会社の利益が増加しました。何が良かったのか?
 経営者か、従業員の努力か、景気か。
 会社の利益が減少しました。何が悪かったのか?
 経営者か、従業員の努力か、景気か。
 本当に何が良かったかの判断は非常に難しいです。
 また、短期的には良いことでも、長期的には悪いことがあります。そして、その逆もあります。
 ソニーの出井氏は、就任当初、プレイステーションが絶好調だったため、名経営者と言われていましたが、晩年はソニー凋落の原因を作ったと言われています。
 美味しい実を得た場合、本当の功労者は、木を植えて木に栄養を与えた前任者でしょうか、木から実を取った人の功績でしょうか?
 前任者でしょう。
 ちょっと考えれば判るのですが、就任当初、収益が良い場合、前任者の功績です。しかし、多くの人はそうは考えません。木から実を取った人の功績とします。
 多くの人は、中長期的に良いことを望むのですが、中長期的に良いことの評価のためには、中長期的な時間が必要になります。
 短期間に中長期的な評価を行うのは、非常に困難です。
 しかし、現実の場、特に会社経営のインセンティブは、短期時間での評価です。その結果、どうあがいても、中長期的には悪いことでも、短期的には良いことを良いと判断します。
 それを避けるためには、行動に対する報酬を、行動直後に与えるのではなく、時間的にヅラす必要性があります。ストックオプションであれば、行使できる量と時間を直後ではなく、数年後に分散させます。

【金銭的インセンティブの問題】
 お金のためにやっているという意識は、仕事に対する満足を低下させる危険性がある。
 人間には、認知的不協和(?)というものがあり、自分のやっていることは正しいんだと思いたがり、そして、その理由を求めます。
 極端な話、賃金が安い、かつ、仕事しなければならない場合、使命感や「私はこの仕事が好きなんだ」という理由・動機付けを行います。
 それに対して、賃金が高い、かつ、仕事しなければならない場合、「私はお金のために仕事しているんだ」という理由・動機付けを行います。
 「私はお金のために仕事しているんだ」は、使命感や「私はこの仕事が好きなんだ」という理由・動機付けに比べますと、仕事に対する満足度が低下して、やらされ感が強くなる危険性があります。