核抑止論の話 〜核を持つことが戦争抑止論ではない。

核抑止論の理論・概念の一つに、相互確証破壊(Mutual Assured Destruction, MAD)というのがあります。


 略称がズバリ、MAD(キチガイ)ですね。
 命名者は、素晴らしいですね。確信犯ですね。


 相互確証破壊は、殴り合いでお互いが壊滅状態になるのがポイントです。


 単純にいうと、相手に核の先制攻撃されて、壊滅状態になっても、残存の核兵器で相手を壊滅状態にできる状態が明確だと、お互い壊滅状態になるので核戦争が抑止されると基本的に考えます。
 上記を満たすには大量の核兵器が必要になります。
 人類を7回全滅できるとか、1隻の原子力潜水艦で世界の半分を滅せるとか、すごい世界になるわけです。


 また、なまじ核に対する防衛力が上がると必要になる核が増える。また、そもそも相互確証破壊が壊れる危険性があります。
 そのため、相互確証破壊の崩壊を懸念してABM(Anti-Ballistic Missile,弾道弾迎撃ミサイル)の配備を制限する弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)が米ソ間で結ばれました。


 ロシアが、ミサイル防衛構想に反発するのは、この辺ですね。相互確証破壊を壊す気だろとなるわけです。


◇最初の一発で相手をKOできるなら。


 核兵器を持つ=無条件に安全になるではないんです。


 相互確証破壊がない場合は、より危険な状態になります。

 最初の一発で相手をKOできるなら、先に殴った方が優位なわけです。
 KOできなくても相手をフラフラにして反撃を抑えることができれば先制攻撃の意味があります。


 先に殴った方が優位な場合、双方が先に殴る誘惑にかられるので、危険な状態になります。


 核抑止論どころか、核により戦争が誘発されます。


核兵器は最大のターゲットの一つ。
 核兵器は最大のターゲットの一つです。
 そのため、早期に潰したい兵器です。


 下手に核兵器を持つ・または持とうとすると、それを潰すために軍事行動を起こされます。
 この辺は、イラクで起きましたね。


 アメリカの核兵器開発は、ナチスドイツの核兵器開発に触発されたわけですし。
 よく日本が核兵器を持っていれば、核兵器を落とされなかったと言う人もいますが、逆でしょう。
 核兵器を潰すために、核兵器の使用、大量爆撃が考えられます。


核兵器を持つ意味。
 アメリカ、ロシアは相互確証破壊を満たすだけの十分な量の核兵器を持っていますが。


 イギリス、フランス、中国などは量が少なすぎます。


 では、なぜ所有するかと言いますと・・・・


 イギリス、フランスは、非核保有国に対する優位性ですね。
 ロシアに対しては意味がなくても、非核保有国に対しては、軍事的に優位に立てるわけです。


 中国の場合は、憶測が入りますが、通常兵器の劣勢をカバーするための兵器でしょうね。
 30年前、40年前の中国は通常兵器では、勝負にはならなかったので、核による一発、引き分け狙いですね。
マッカーサー朝鮮戦争の際に、中国本土に対する核兵器の使用を進言していたので)
 または、進行してきた敵軍に対しての使用でしょう。


 現在の中国は中途半端なので何を考えているか不明です。



◇日本が核兵器を持つなら
 どのくらいの量を持つか、日米安保との関連が重要になります。


・少量で、アメリカの核の傘に入っていない場合。
 少量の場合、中国の先制利用を誘導するだけです。
 また、非核保有国に対して不自然に優位になるので、非核保有国に対して、不要な脅しになってしまいます。
 イギリス、フランスのような振る舞いですね。


・少量で、アメリカの核の傘に入っている場合。
 アメリカの核の傘があるので、単純には中国の先制利用を誘導しません。
 が・・・・別に中国に対して有利にもなりません。
 結局、何のために独自の核を持つの? となってしまいます。
(当然、中国側は日本側の議論、戦略を分析します)
 

 自由に先制核攻撃できるメリットも生まれますが。
 その場合、「俺は、先制核攻撃するぞ」とのメッセージにもなります。
 相手は当然、先に核先制攻撃をしたがりますので、相手の核攻撃を誘導します。
(一方的に日本にやられるよりも、道連れ、日本・中国壊滅を狙うわけです)
 また、中国も、日本の核先制攻撃に備えて軍拡をするので、余計な軍拡競争に陥るだけになってしまいます。


 自由に使える核が欲しいというだけでは、
 非核保有国に対して不自然に優位になるので、非核保有国に対して、不要な脅しになってしまいます。