TPPの北海道への影響試算 の微妙な点

北海道への影響試算
 もっともと思える点もあれば、怪しい点もあり。

【過大な試算】
 特に怪しいのが、米。
『外国産は国内米と競合し価格面で優位なことから生産量が9割削減(1割に減少)
■米生産額  ▲ 1,130 億円
■作付農家 ▲ 15 千戸
■関連産業 ▲ 470 億円
■地域経済▲ 913 億円
■雇用▲ 22 千人
 9割減は、過大ですな。今の北海道米は、品質が高い。国産信仰もあるので、ここまでは減らないでしょ。

 その一方、テンサイ、デンプンは妥当かな。10倍以上の価格差は異常。
 壊滅は免れない。
 酪農は、バターの内外価格差が3倍。鮮度が重要な生乳は残るけど。保存できる脱脂粉乳・バター・チーズは激減は避けられない。

【転作による増加分を計算していない】
 テンサイを辞めたからといって、何も作らないのだろうか?
 常識的に考えれば、収入は減るだろうが、転作するだろう。その分の増加分が計算されていない。

【どうするの。どうなるの。】
 TPPが締結された場合、北海道の農業・周辺産業・地域経済が大ダメージを受けるのは避けられない。
 さって、北海道として、どうするべきだろうか?
 過去の北海道の行動から考えると、いくつかのパターンが考えられる。

①TPP反対運動を繰り広げる。準備・対策は容認になると主張し、TPPが施行された場合の対策・準備をしない。そして、対策・準備していないため大ダメージを受ける。
②TPP反対運動を繰り広げる。ほぼ①と同じパターン。多額の補助金を国から受け取るが、農業向けの補助金は農道や土壌改良に使われ、産業振興のお金は道路・建物建設に使われ、土建屋が儲かる。しかし、農家の強化にはほとんど意味がない。農業衰退後、補助金が終わり、数年後地域は壊滅。
③TPP施行前から対策・準備を進める。補助金は農業の強化、産業の振興に有効活用する。

 北海道の役人、農協、農家、土建屋の現状の発想のままだと、①と②だろう。

【③の具体策は】

①関連産業の転業支援。
 農家への個別保証は農家であって、肥料や農薬産業にはない。
 北海道は、農業関連産業の農業以外への転向を支援しないといけないのだが...あまり進んでいないようだ。
②大規模支援・経営効率化による価格競争力強化。
 日本の農業は、資源投入量・労働力投入量が多く、価値の割に費用が多い。関連産業は儲かるが、悪循環。
③転作支援。
④新品種の開発
⑤ブランド化、鮮度を活かす
 松坂牛は、自由化の影響をほとんど受けません。松坂牛を食べるか、安い牛肉を食べるかで迷う人は、まずいませんから。
 オーストラリア・北米から製品を運ぶ場合、船だと3週間はかかります。
 台湾・韓国などは乳製品の輸出国ではないので、ライバルにはなりません。
 生バターや生チーズなど鮮度を生かした商品を開発して、台湾・韓国・中国に売りこむぐらい戦略が必要です。