一言、酪農、放牧と言っても、農業用語と地理用語との違いがあり、ややこしい。
■農業としての酪農、放牧、畜産
ざっくり書きますと、
畜産=家畜を飼うこと。家畜の生産。
酪農=乳目的で牛などの家畜を飼うこと。畜産の一種。
年老いた乳牛を肉用に売ることがありますが、基本乳目的。肉目的は酪農とは言いません。
放牧=家畜の飼い方の一種。つまり方法。
英語で言うとgrazing。生えている草を食べるという意味。
牧草地で草を食べているが放牧。
小屋などで飼料を食べているのを、放牧とは言わない。
(じゃあなんて言うんだ?舎飼いかな?)
そのため、普段は小屋で飼っているけど、夏の昼間だけで放牧なんてこともある。これも狭い意味での放牧。
ニュージーランドみたいに、小屋で飼わない放牧酪農なんてものもある。
これが広い意味での放牧かな?
■地理用語としての酪農と放牧
地理の場合、酪農地帯、放牧地帯という言葉になっていると思います。
酪農地帯は酪農が多い地域ですね。放牧酪農かどうかは関係ありません。
基本的に、乳牛は熱いバテますので、酪農地帯は北海道とか高原の涼しいところとか、アメリカだったら北部など涼しいところになります。
ここで問題になるは、じゃあアメリカ(中部や西部の乾燥地帯)・オーストラリアの放牧地帯って何よとなります。
肉牛目的の放牧です。
農業は基本的に、
畑作・稲作が出来れば→畑作・稲作
畑作・稲作に不向きだけど涼しいし牧草が沢山できる→酪農
少ないけど草がある→肉牛目的の放牧(アメリカやオーストラリアの放牧地帯)や羊の放牧
草もない→農業不能か灌漑農業。
放牧地帯は積極的に放牧地帯になるというよりも、
他の農業が無理だから放牧地帯と言う感じです。
放牧地帯での、酪農は無理なのか?
無理じゃありませんが、大変です。
酪農地帯ですと、1万平方メートル(100メートル×100メートル)あれば、牛一頭飼えます。
放牧地帯は乾燥地帯で草が少ないので、5万平方メートルとか、10万平方メートルとか必要になります。
乾燥地帯ですと、100万平方メートルで、羊5頭とか、そういう割合です。
そのため、農家一軒当たりの面積も、とんでもない面積になります。
また、一か所に滞在していますと、草を食べ尽くしてしまうので、
カウボーイやカウドッグ・シープドッグや誘導して、移動させる必要があります。
話を戻しますと、
酪農は、単純に乳牛を飼うだけではなく、乳搾りが重要です。
1日2回乳搾りをしないといけない。
しないと牛が病気になってしまいます。
早い話が、広大な農場で1日2回も乳搾りなんてできない。
仮にできたとしても、生産性が悪すぎます。
また、牛乳の出荷も問題です。道路も整備されていない草原に居るわけですから。
(遊牧民族みたいに、家畜の側に居いる感じなら可能ですが)
酪農は成り立たないけど、肉生産の放牧畜産なら成り立つので、
酪農地帯ではなく、放牧地帯となります。
PS
放牧は何も、暑いところだけではありません。
寒冷地帯などでは、トナカイの放牧があります。
これもやはり、肉目的ですね。