TPPの試算の怪しい点 〜コメが9割減

 さて、米の9割減少。本当にこんなことが起きるのだろうか?
 日本の消費量は、だいたい770万トン。
 もし、生産量が9割減るとしたら、700万トン輸入する必要性があります。
 しかし、 以前他の記事でも書いたのですが、実はそんなに輸出する余裕がある国がそもそも存在しない。
 しかも、計算の前提に疑問な点も多い。
①そもそも、本当に日本の消費者の9割が、中国米やアメリカ産米を選ぶのだろうか?
②空いた農地で米以外の作物を作らないのだろうか?

①に関しては...結構国産信仰はあると思う。
 そもそも、中国米買う人いるのか?
 実は中国米は価格が高騰しているとの話もある。
 仮に国産米が半値になったら、外国産を買う人がいるだろうか。

②に関しては、計算していない。
 あくまでも19品目が国産から輸入になる点だけを計算して、転作による増加は一切計算していない。
【7割以上が65歳以上】
 さらに専業(主)は40万世帯程度しかない。
 何100万人に影響が出ると言っているが、そんなに数が多いのは兼業だから。そして、そのほとんどは65歳以上。
 もちろん、専業にもダメージは出るが、農家、農家と言っているが、不動産で儲けていても農家なんだよね。
 ちなみに、農業のGDPに対する付加価値は5兆円でGDPの1%。総出荷額は8兆円。米1.8兆円で、畜産2.5兆円。園芸3兆円。
 日本の農業は米と主張する人も多いが、実は2割弱程度でしかない。
 ちなみに、日本は以前は繊維産業大国だったが、1995年100万人が2010年は40万人に減っている。6割減。ほぼ専業。それに対して、農業は3割ぐらいしか減っていない。

ダンピング
 ライバルはアメリカ米だが...実は税金投入されダンピングされていたりする。
 だったら、日本政府もダンピングすれば?
 1トン当たり5万円くらい。10キロ当たり500円。
 農地や農家ではなく、生産量ではなく、農協を通さないのを含めた販売量に対して補助金を農家に対して出す。
 ちなみに、農林水産省の予算は22,712億円。米の生産量は770万トンだから、3850億円あれば出せる。ねん出は農水省内の予算の用途変更で十分だ。米価が下がるので、生活者への間接的な補助金にもなる。1人頭、3000円。4人家族なら1万2000円。子供手当の変形版だ。
 関税で、国内の米価を上げて、庶民・貧乏人の生活を苦しめるよりも、税金を使うがダンピングも手だろう(金持ちだから言って、米を2倍食べるわけではない。食料品の高値維持はエンゲル係数の高い低所得者を直撃する)。

【なぜ、対抗できないのか】
 本州農家の平均面積は1.3haに対し、北海道は20ha、十勝は39haとなっています。
 例えばの話、北海道のコメ農家は、5〜10ヘクタールなんてザラです。
 9割の農家が潰れて、残りの1割に集約すれば、50〜100ヘクタールになる。
 酪農に関しても、北海道の十勝の農家は、20〜50ヘクタールなんてザラです。
 9割が潰れて、残りの1割に集約すれば、200〜500ヘクタールになる。
 ちなみにアメリカよりも価格競争力がある、ニュージーランドの平均面積は、100ヘクタール。
 現時点で生産コストは3倍差があるけど...
 こうなると、海外への対抗も夢じゃない。

 でも、実は対抗できない。
 実は、機械が高いうえに過剰、農薬や肥料が高く、量も使い過ぎで面積を大きくしても、生産費用が下がらないのだ。
 高い原因は農協。
 北海道の農協がまともに機能すれば、1ヘクタール未満の内地の農家なんて、北海道の農家にとうの昔に駆逐されている。しかし、北海道の農家の生産コストは、そこまで下がっていない。
 酪農の場合は、実は外部から資料を買って育てている農家が多い。流通飼料代だけでニュージーランドの生産コストを超えてしまう。流通飼料代の多くは輸入なので、自給率的には無意味。
 さらに、減価償却だけで、NZの生産コスト8割くらいになる。
 面積を大きくし1ヘクタール当たりの牛の数を減らせば、流通飼料代を削減できれば、コストは下がる。が...農業のやり方を変えないといけないだろう。
【省コスト化と省力化の区別かついていない】
 戦後、日本の農業は機械を導入した。しかし、それは省力化であって、機械代を含めると省コストではなかった。
 酪農も大規模化したが、牛の頭数が増え、機械化で対応したため、機械代を含めると省コスト化になってなかったりする。
 ちなみに、NZを真似て、省コスト化をした農家は、7割コストを削減できた。
 http://homepage1.nifty.com/hiratatuyosi/archive/Oh!mynews/2007_02_22.html

【NZは10年で改革】
 NZも昔から価格競争力があったわけではない。1980年代中ごろから、10年かけて改革したのだ。
 北海道も2000年から改革していれば、今頃は果実を得ていた頃だろう。