日経新聞:「働けない 若者の危機 過保護になれた正社員」の内容がおかしい

 日経新聞:「働けない 若者の危機 過保護になれた正社員」の9月14日の記事を見て、大きな違和感を感じた。


 テーマは良いと思うのですが、記事の内容が胡散臭いのだ。


 最初に思ったのは、デンマークの失業率がおかしいのだ。
 新聞の記事では14%となっているが、そんなに高くない(若者だけなのだろうか。記事からは判らない)。


失業率の推移(1980〜2012年) - 世界経済のネタ帳


 はたして、記者はちゃんと裏を取ったのだろうか?
 ネットから適当に記事を取ってきて、書いたのではないだろうか?


 こうなってくると、記事の文章自体が疑わしくなる。



【解雇がOECDで一番厳しいのか】

 例えば、「解雇規則はOECDの中で一番厳しい」みたいなことが書いてある。

 どうにもこの記述、正しいようですが、ミスリード臭い。
 http://kamikawa.exblog.jp/14490346/


 要するに、一部のパラメータ、解雇規制強度のパラメータの一つ「解雇を行う際の充足要件」(狭義の「解雇の難しさ」)については、日本はOECD30カ国中、第1位ということらしい。


 総合評価で見ると、必ずしも高くない、低い方だ。

http://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=EPL_R

 http://kamikawa.exblog.jp/14490346/


 つまり、日本は、解雇規則はOECDで一番厳しいが、正社員の総合的な解雇規制強度は、中間以下なのだ。


 総合では低い方なのに、一部パラメータだけを抜き出して、世界一難しいと言うのは、どうなのだろうか?


 なぜ、OECDは総合の数値を出したのだろうか?
 一部、パラメータだけでは、比較や判断が難しいからだろう。
 それをわざわざ一部パラメータを抜き出して、主張するのだから、初めに結論・主張があり、それに合わせて、データを引っ張ってきている。
 ミスリードを目的とした記事と考えてもおかしくない。



OECD4月の提言】
http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/2012%2004_Japan_Brochure_JP.pdf


OECD4月の提言の主旨は、なんなのだろうか?
正社員の解雇を簡単にしろだろうか?


「社会一体性の推進」の項目のところで、書かれていますが・・・

企業は正規労働者に対する高い雇用保護を考慮し、雇用の柔軟化を実現するため、また労働費用削減のために非正規労働者を採用している。


 4月の提言では、正社員の解雇の難しさに関する記述はこのくらいではないだろうか?
(注意:私も細かく読んだわけではないです)


 この章の主な提言は、文章にちゃんと書いてあった。

労働市場の二極化を是正し、増加する所得格差を反転させる

OECDの主な提言
• 正規労働者と非正規労働者間の雇用保護の格差を縮小することで労働市場の二極化を是正する。
非正規労働者への社会保障の適用範囲を拡大することにより、非正規労働者の待遇を改善し、非正規
労働者を雇うことによる費用の優位性を減らす。
非正規労働者の訓練を充実させ、正規雇用への移行の機会を増やす。
• 日本版の職業能力評価制度設立に向けた計画を推進する。
• 就業意欲を高めるであろう勤労所得税額控除を導入することにより就業給付を強化する。


 要するに、非正社員の処遇を上げろというのが、主な主旨なのだ。


 また別の章「男女格差の是正」の主な提言は以下のようなものです。


「男女格差の是正」

OECDの主な提言
• 啓発キャンペーンやスクール・カウンセリングなどを通じて、教育や職業選択が将来のキャリアや所得に
与える影響について、若い女性の認識を高める。
• 給与体系や昇進制度を見直すことにより、長時間労働を促し、男性によるファミリー・フレンドリーな制度
(有給休暇や育児休暇の取得)の利用を抑制する職場文化を変える。このための施策には、年功よりも
成果を重視して給与を決めることをより重視する、部下が休暇をとった場合に管理職に特別手当を与え
るといったことなどを含むべきである。
• 子どもを持つ全家庭に質が高く負担可能な保育サービスを提供し、両親が育児休暇を平等にとれるよう
にする。
• 夫婦双方にとって、働くことがメリットをもたらすよう税制度を改革する。
• 公的・民間部門において、管理職に占める女性の比率に係る現実的で測定可能な目標を設定する。


 OECDが何を問題にしているかは、記事と大きく異なるのではないだろうか?


日経新聞へ】
 ちゃんと調べて記事を書きましょう。


PS
 個人的にはOECDの提言は、的を得ていると思うし、ある程度解決の方向も示している。
 政治家や経済界のためだけの提言ではなく。
 市民のこともある程度考えている。


 なのになんで、日本の政治の政策は混迷するんだろう。