「想定外をなくせ!!」「想定外を想定する」
東電の人たちなどが、「想定外」を連呼したせいか、「想定外をなくせ」「想定外を想定する」が流行語になりそうな予感。
しかし、この指示はどうかと思う。
言っている本人たちは、カッコイイと思っているんだろうけど、物事を具体的に現実化している側から見れば、現実的ではない。
脳内妄想だけで、現実化しない上の人たちは、それで良いんだろうけど。
「常識を疑え」と言う評論家やコンサルタントや経営者、そしてインチキ宗教と同じニオイがする。
【少なくとも、予想外と想定外は違う】
予想外は、そもそも予想できなかったか、予想から外れた場合を言います(予想よりも大きかった場合なども、予想外になるので、想定外と被る点も多いですが)。
それに対して、想定が以下の様な意味なので
[想定] ある条件や状況を仮に設定すること。
想定外とは設定外いうことなのでしょう。
つまり、予想していても、設定しているより外の場合は、想定外ということになってしまう。
「マグニチュード9の地震ありうるよね。でも、可能性は低いし、それに対応するのはお金かかかるから、マグニチュード8に想定しよう」ということは十分あり得ます。
明治時代にマグニチュード8クラスの地震に襲われるため、このクラスの地震の可能性は非常に高い。そのため、8クラスの地震を想定しないのは、明確な手抜きになります。
【なぜ想定外になるのか?】
①思考上のミス
②結論が先にある
③歪んだ現実主義
①思考上のミス
いろいろありますが...
Ⅰ そもそも予想外
観点から抜けていたなど、そもそも予想外。
対応:チェックシート、フレームワークや多様な専門家によるレビュー
Ⅱ 他の要素の優先
性能やコストなどの制約から無制限に設定するのは困難だ。
そのため、優先順位の高い物を実現するために、やむをえず想定を小さくしてしまう。
Ⅲ その値を想定しても実現できない。
②結論が先にある。
始めから、結論が設定されていて、都合が悪いことから、想定から外す。予想がなかったことにする。
②-Ⅰ 予想を意図的に外す。
②の変種、発展版。
そもそも、結論があり。その結論に合わない予想をする人・会社を意図的に外す。
学者やコンサルタント・専門家の意見を聞いたとありますが、都合の悪いことを言う人は、そもそも雇われない。また、少数派にして、意見が通らないようにするなどがあります。
③歪んだ現実主義
我々の認識する現実は過去です。過度な現実主義は、前例主義になります。
予想は、現実ではありません。そのため、確実に証明することが困難です。
おそらくマグニチュード9の地震の発生を予測した人はいるでしょう。
しかし、発生を証明するのは非常に困難です。それに対して、起きていないのが現実です。起きていないことを証明するのは容易です。現実を直視すれば、前例主義で言えば、マグニチュード9の地震は起きないとなってしまいます。
②③の場合は、上司や組織の体質が影響してきます。
東電の場合は、②③でしょうか。
【無責任な議論】
②③のような組織では、多くの場合、無責任な議論になります。
例えば、マグニチュード9の地震に対応しようとした場合、多額の費用がかかります。
地震が起きない場合、明らかに無駄になります。その責任を誰が取るのでしょうか?
当然、予想した専門家は取れません。
では、マグニチュード9の地震が起きた場合、起きないという人は、責任が取れるのでしょうか?
多くの人は、「取れる」と言います。
無責任な人は、いとも簡単に責任が取れると言う人でもあるのです。
【1000年に1度】
1000年に1度の事態に対応する必要があるのかと言われれば、原発の場合十分にある。細かい話は、以下の記事
1000年に1度の大地震と考えるか、40年で4%の大地震と考えるか。 〜表現により印象が大きく変わるを読んでください。
【想定外をなくす現実的な方法】
[想定] ある条件や状況を仮に設定すること。
ある条件や状況を仮に設定しなければ、そもそも想定外はなくなる。
そう、想定外をなくす現実的な方法は、想定をしなくなることだ。
予想をしなくなり、想定をなくせば、想定外はなくなる。
「想定外をなくせ」が、そもそも「想定自体を放棄」という思考放棄の事態にならないことを祈ります。