川崎重工と三井造船合併は、なぜ破談になったのか?

 川崎重工三井造船の売上高を見た場合、川崎の方が三井の倍ありますので、大である川崎が小である三井を飲むように見えます。
 通常、破たんになる場合は、三井造船側が嫌がるのですが、今回は川崎側のクーデターで破談になっています。


 詳しい内輪の内容は知りませんが、両者のビジネスを見ますと、合併に話に、もともと無理があったのが判ります。


 ポイントは、川崎重工内に置けます船舶、プラント部門の比重です。
 一見、大である川崎が小である三井を飲むように見えますが、セグメントで見ますと、実は逆なんですね。


【セグメント別売上】
川崎重工(半年分なので倍で考えてください)

出典:http://www.khi.co.jp/ir/achievement/segment/index.html


三井造船


出典:http://www.mes.co.jp/investor/highlights/index.html


 川崎の船舶部門の比率は、8%程度です。年間売上としたら、川崎は800億円〜900億円と言う感じでしょうか。
 対して、三井の船舶部門は、3200億円の売上です。


 つまり、三井の方が3〜4倍程、大きいんですね。
 二つ足せば、4000億円です。
 既存部門で一番大きな、航空宇宙とバイクの売上が、2000〜2500億円ですから、船舶部門が一躍一番の巨大部門になるわけです。
 次に、巨大化するのが、旧経営陣の出身母体であるガスタービン機械部門でしょうか。
 対して、三番手、四番手に落ちるのが、航空宇宙とバイク部門ですね。
 社内派閥としては、納得しない人も多かったのでしょう。 


 社内勢力が変わりますが、それ以上に問題なのが収益性と文化です。


 川崎から見た場合、競争が厳しい採算性が乏しいと思われる船舶部門が巨大化する訳です。
 会社としては売上高利益率が低下する危険性があります。
 資本効率も悪化するので、売上は増えたけどなんか苦しい状況になります。


 また、川崎と三井が合併した場合、オペレーションや文化は、セグメントごとに見て、小が大に合わせるのが道理です。
 つまり、川崎の船舶部門が三井の船舶部門に合わせるのが道理です。
 逆ですと、変更コストがバカになりません。


 そうしますと、一つの企業に二つのオペレーションや文化があることになってしまいます。
 これは、やはり大問題です。
 合併により組織の変化速度が遅くなり、失敗する会社の典型例です。


 こんなことをするくらいでしたら川崎が船舶を吐き出して、三井造船に合併させた方がマシです。一方、川崎は、エンジニアリング・プラント部門を代わりに引き取ります(三井のエンジニアリング・プラント部門はあまり業績が良くない)。
 一言で言うと事業の交換ですね。
 そして、業務提携・資本提携して、シナジー効果を狙った方が、まだスッキリしているでしょう。
 三井は嫌がるかもしれませんが・・・(でも、それって合併の意味がないってことになるか)


 LNGプラントとガスタービンは、発電と言う形でセットになることが多いので、シナジー効果がある可能性があります。
 細かく言いますと、川崎と三井でどっちが大きいかを比較して、ガスタービンとかいろいろと交換した方が良い。


 エルピーダとか、ルネサスは主導権争いとかで、分離合併は上手く行きませんでしたが、分離合併自体はそんなに悪い手ではありません。