サイクルタイムとタクトタイムの違い

なんというか、ネットに書いてあるタクトタイムの説明が、微妙なものばかり(間違っているのも多い)なので、サイクルタイムとタクトタイムの違いを説明します。


■なぜ、違いが判り辛いのか?
 中小企業診断士試験などの試験の弊害だと思われます。
 現場での使い方は、全然違うのですが。
 サイクルタイムもタクトタイムも試験での計算式がほぼ同じため、見分けがつかなくなるのでしょう。


■サイクルタイム。
1つの作業が完了してから、次の作業が完了するまでの時間。


工場の作業の場合、多くの場合繰り返し作業になります。
①部品を持ってくる→②加工する・組み立てする→③部品を渡す→①部品を持ってくる
などですね。


図で書きますと、円になりますのサイクルタイム?なのでしょうか?


注意点として、サイクルタイムという用語は、業界や状況により対象が異なると言う点です。一個人の場合もありすますし、チームや組織の場合もあります。生産活動の場合もありますし、他の場合もあります。


何のことを指しているか、判らない場合は、何のサイクルタイムですかと、すなおに聞いた方が良いです。


 サイクルタイムは、結果の評価の場合は計算式で出しますが。
 普通は実測であったり、理論値が重要になります。
 ただし、理論値は「サイクルタイム = 稼働時間÷生産数」なんて、計算の仕方では出しません。
 試験の計算は、所詮試験用です。
 
 地道に、作業や工程を分析して出します。
 そして、理論値と実際の差が改善などで役に立ちます。




■タクトタイム

生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間のこと。
語源は、音楽演奏の指揮者がタクトを用いて演奏の拍子取りをして均等なタイミングを図ることによる。

出典;wiki


個人的には、wikiの説明はシンプルで的確だと思います。
各工程のサイクルタイムがバラバラである可能性があるため、タクトタイムは、工程間のバランスやタイミングを図るのに重要なんです。


 中小企業診断士などの試験では、
 タクトタイム=(日当たり稼働時間)÷(日当たり必要数)・・・①
 という計算式で出しますが、現場ではこんな計算で出すことはまずありません。中小企業診断士用の式です。
(生産に必要な時間=タクトタイム×生産台数という計算はしますが)
 生産ラインを変えない限り、タクトタイムは定数に近いので、①の式で出すと言うことはまずありません。

 対して、生産に必要な時間や生産台数は、毎日変わる変数です。

 
【タクトタイムはどう計算するの】
 現場でのタクトタイムは、作業のサイクルタイムなどを元にして、決めるものです。
 もちろん、計算や数値は使いますが、計算で出すものと言うよりも決めるものです。


 タクトタイムを理解するためには、ある程度知識が必要です。


例えば、パソコンの組み立てラインがあったとします。


作業員が三人いて、
Aさんが、電源を付ける工程を二分。
Bさんが、CPUとCPUファンを付けるのに、三分。
Cさんが、メモリを付けるの一分。だとします。
何ともバラバラですね。合計時間六分です。
(個人のサイクルタイムはAさん2分、Bさん3分、Cさん1分となります)


さて、このラインは一時間にだいたい何台生産できるでしょうか?
60分/3分 =20なので、20台ですね。
Aさんは、60分で30台分、
Bさんは、20台分、
Cさんは、60台分できます。
一番、遅いBさんが、20台分しか、CPUとCPUファンを付けれないので、ボトルネックになり20台しか全体で生産できません。
(一台当たりのサイクルタイムは3分、個人のサイクルタイムはAさん2分、Bさん3分、Cさん1分となります)


AさんとCさんは暇ですね。原因は、Bさんが3分かかるのに、Aさんは2分、Cさんは1分のためです。
作業時間がバラバラで、作業バランスが良くありません。


作業時間が、バラバラというのが大問題なんです。
なんらかの基準となる均等?な作業時間が必要です。この基準となる均等な作業時間がタクトタイムです。

オーケストラの人が、バラバラのリズムで音楽を出さないように、指揮者のタクトに合わせて、演奏するのと似たようなものです。


中小企業診断士などの試験では、60分/20台で、タクトタイム3分となります。
まぁ、間違いではありませんが・・・


さて、タクトタイムの説明を見直しますと・・・
「生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間のこと」
とあります。


均等なというのがポイントです。


【タクトタイムの使い方】


製品が出来るまでの合計時間が6分で、作業員が三人なので、各人の作業時間を2分(6分/3人)にしますと、均等になります。
目標のタクトタイムを2分とします。
Aさんは2分で、OKですが。Bさんは三分なのでタクトタイムをオーバー。Cさんは1分で小さすぎます。


ここで重要になるのは、タクトタイムをオーバーしているBさんの時間を、タクトタイムまで減らそうとすることです。
この場合は、Cさんが暇なので、BさんのCPUファンを取り付ける作業をCさんにやってもらうことにしましょう。


その結果、Bさんの作業時間は、2分30秒になったとします。Cさんは1分30秒です。
この場合、目標のタクトタイムは2分でしたが、実際のタクトタイムは、最も遅いBさんの2分30秒となります。


60分での生産量は、60分/2分30秒=24台となり、生産性は上がります。


生産計画の場合は、実際のタクトタイムが重要です。


改善活動の場合は、目標と実際のタクトタイムが重要になります。



【本当にこれで良いのか?】
 実は私の説明にも問題・疑惑があります。


 生産性があがったのですが・・・・60分で
24台を作る必要性があるのか? という疑惑です。
 私がやったのは、三人での生産能力を拡大するためのタクトタイムの使い方です。


 ここで出てくるのが、中小企業診断士などで出てくる式です。
 供給・需要ベースで出てくるタクトタイムです。
 生産ラインの立ち上げ時などに使います。


 タクトタイム= 1÷(1時間あたりの1ラインの最大生産数)



 ラインは複数ある場合があるので、1ライン当たりとしました。
 ラインを増やしたり、減らしたりいろいろあります。

 
 早い話が、どのくらいのペースで生産したいかです。
 結果的に、中小企業診断士ので良いじゃないか!! となるかもしれませんが。
 その過程の考え方の問題ですね。


 で、どこかの工程のサイクルタイム > タクトタイムの場合
 このタクトタイムは、単純には無理となる場合があるので、作業を分割したり、複数ラインにしたり、機械入れたり、いろいろ改善する必要があるわけです。
 全工程のサイクルタイム < タクトタイムの場合
 実現は可能となります。


 上記の問題も、タクトタイムに余裕があるなら、そもそも三人じゃなくて、二人で良くない? などとなるわけです。


 また、まぁ生産性があがるわけだから、早く帰れるし、別に良いじゃないという考え方もあります。
 また、余った時間を改善に使ってもいいわけですし。



【まとめ】
 でも、サイクルタイムとタクトタイムの違いは、なんとなく判ってもらえたと思います。