輸出依存度・貿易依存度という意味不明な言葉 〜産業構造や人口を考えないと意味がない

 昨日の日経新聞に、貿易依存度の記事があったのですが、なんだかなという感じです。


 この輸出依存度(貿易依存度)というのは、かなり恣意的な意味で使われる要注意な言葉です。

 以前、同じ主旨の記事日本の輸出依存度の話を書いたので書き直しですね。


【なぜ、シンガポールとドイツが高いのか】
 シンガポールGDPを超えています。
 それは商品を右から左に流しているためです。


 貿易=その国での生産・消費ではないのです。


 ドイツも、似たようなものです。国境が接するフランスとドイツの貿易は、関東と東海の物資のやり取りみたいなものです。
 これを貿易に換算したら、とんでもない額になるでしょう。


【小国ほど貿易依存度が上がる】
 神奈川が独立国ならどうなるでしょうか?


①通過
 神奈川県内を通る全ての物資が、輸出入にカウントされます。
 それこそ、百兆円以上になるでしょう。神奈川のGDPの数倍になるでしょう。


 また、ただ単に、通過する荷物はカウントしないとしても、相当な貿易額になります。


②市場のほとんどは地域外
 神奈川で生産される工業製品の大半は、神奈川外で消費されるわけですし、神奈川内で消費されるものの大半も、非神奈川製品な訳です。そのため、GDPで割ると比率は高くなります。


③分業
 さらに、現在は分業が進んでいます。
 神奈川県内から、輸入して、少し加工して、神奈川県外に売れば、GDPの増加額以上に、貿易額が伸びます。


 例①
 8億円の部品に手を加えて10億円で売れば、GDPが2億円増えます。
 一方、輸出は10億円、輸入は8億円、合計18億円増えます。
 GDPの増加の9倍ですね。


 例②
 それに対して、1億円の現在を加工して、5億で売った場合どうなるでしょうか。GDPは4億増えます。
 しかし、貿易額は6億しか増えません。しかも、GDPの増加の1.5倍です。


【貿易依存度を上げるには】
 低賃金を武器にした労働集約型の組み立て産業があると、例①のように、劇的に貿易が増え、貿易依存度が上がります。

 現地の人から見て高額な部品を、安価な手数料(わずかなGDP増加)でやるわけですから、そりゃGDP割があがります。
(貿易額は大きく増えるけど、分母のGDP増加がわずかな例①)

 非貿易部門が大きければ、分母が増えて、GDP割が減りますが、低所得の小国は、非貿易部門が小さいため、貿易依存度が上がります。

 典型的な東南アジアタイプですね。


 フィンランドなどの小国は、②が原因で貿易依存度が上がります。
 市場が小さすぎて、国内市場だけでは成り立たず、国内で生産せずに、ほぼ全部輸入。
 生産するものは、国内市場だけでは成り立たず、ほぼ全て輸出。けっか、貿易依存度が上がる構造です。


【日本の特徴】
 韓国・台湾・東南アジア・中国・シンガポールなどは、国境を越えた分業が進んでおり、海外から部品を買わないと、製品が生産できません。


 韓国は、輸出が増えると、日本からの部品の輸入が大幅に増えます。
 それに対して、日本は韓国に輸出したからといって、輸入は劇手的に増えません(原材料費の輸入は増えますが)。
 理由は他国から部品を輸入して輸出する、産業構造ではないためです。
 日本は例②ですね。


 また、市場も大きいので、国内生産がなりたちます。当然、貿易依存度が下がるわけです。


【なぜ、変な議論がまかり通るのか】
 経済学者は数字だけで、現場を知らない。
 現場の人は現場を知っているけど、全体を知らないし、数字も知らない。
 上の人たちは、何も知らない。


【とは言っても、内需外需で見た場合】
 日本は小泉首相時代、GDP国内総生産)は伸びました。
 国民は一生懸命働いて、いっぱい生産したんです。

 が...個人が豊かさを実感する個人消費は伸びませんでした。

 じゃあ、生産物はどこに消えたかと言いますと、輸出(黒字)と企業の生産設備です。

 いっぽう、アメリカは自分たちが生産した以上に消費(貿易赤字が出るほど、個人がガンガン消費)したので、非常に豊かな生活だったわけです。