財政赤字と増税。なぜ増税したいのか。 〜90年だと2010年代の違う問題

 90年代。日本は景気対策として、赤字覚悟で、どんどん公共工事しました。
 どうにも、この時代の印象が強いせいか。
 増税論議をゆがませている。


 2000年以降に、爆発的に増えたのが高齢者医療・生活保護などの社会保障費。
 一方、
 無駄な公共工事は、まだ多いが、公共工事自体の金額は減っている。


 ハッキリ言って、高齢者医療などの社会保障費を押えるのは容易ではない。
 小泉政権時代に、医療費を無理に下げようとした結果、医療問題が発生した(もちろん原因は、この政策だけではないですが)。
 ハッキリ判ったのは、高齢者医療などを押えるのは容易ではないこと。
 野放図はまずいが、下手に下げようとすると、サービス面の劣化の方が激しいと言うことだ(選挙にも勝てないし)。

【資産が残る赤字と残らない赤字】

 公共工事の場合、橋などのインフラ(資産)は残りますが、高齢者医療・生活保護などの社会保障費の場合、残るものは少ない。


 公共工事の場合、橋などのインフラ(資産)が残るため、借金が増えたとしても、その分、資産が増えるから良いじゃんと、バランスシート的に言い逃れができる。
 子孫に借金も残すけど、資産を残すから良いだろの世界だ。

 例えるならば、親が、子供の許可を得ずに、勝手に2世代、3世代のローンを組んだわけだが。家が残るから良いじゃんと言う訳です。


 ところが、現在の問題は、高齢者医療・生活保護などの社会保障費です。バランスシート的には何も残りません。単純に、借金だけが増えます。
 
 例えるならば、親が自分の医療費や食費のために、子供の許可を得ずに、勝手に2世代、3世代のローンを組んだわけです。
 まぁ、子供としては、親が生きてくれればと言うのはあるかもしれませんが...
 少なくとも、家計のバランスシートは悪化します。


 そもそも、借金をする口実の根拠が弱くなったわけです。
 もっとも、さらに深刻な別の理由があります。


【お金はいつまで借りれるの】
 問題は、お金の貸し手が、お金を貸せなくなった時です。

 家でしたら、家を建てなきゃ良いと言う話ですが、
 医療費は、治療しなければ良いと言う話で良いのでしょうか。
 それでも良いと言う人は居るでしょうが、多くの人は困ります。


 現状、まだお金は借りていますが、5年後、10年後はお金を借りれないかもしれないという危険性があります。


 膨大な赤字国債は、民間部門の膨大な黒字・貯金を前提にしています。
 もし仮に、民間部門の膨大な貯金を取り崩し始めたら、どうなるでしょうか?
 もし仮に、国の累積赤字>民間部門の膨大な貯金になる危険はないのでしょうか。


 90年代は、膨大な民間部門の膨大な貯金があるため、国も安心して借金できました。
 もっと正確には、過剰な貯蓄による民間の消費不足のため、景気刺激策として、国が借金して消費していました(そうしないと経済が委縮するためです)。


 2010年代は、違います。現在は、景気刺激策的ですが、
 足元では高齢化による社会保障費の増加の不安と、高齢化による民間貯蓄取り崩しの不安があるんです。
 貸し手の貸出能力が低下する一方で、お金の出費は増える訳です。
 そのため、民間の貯金が当てにできないので、国の赤字を怖がるわけです。


 90年代と2010年代では、上記の点が明確に異なるんです。


 お金を借りることを前提に生活プランを当てて居たのに、ある日突然、借りれなくなったら、生活は破たんします(9月ごろのアメリカや現在のギリシャは、お金を借りれなくてビクビクしていたわけです)。
 それを防ぐためには、徐々にですが、借金を当てにしないでも、生活できるようにする必要があるわけです。
 それが、増税です。