最低賃金は、なぜ必要なのか?

 注意。自説が入っていますので、参考までに。
【なぜ必要なのか】
 労働市場は、通常の市場とは異なり、放置した場合、労働力の叩き売りによる、異常な賃金の低下が発生します。それを防ぐためです。
【背景】
 「労働力」は、商品として扱われますが、労働力の商品としての特長は何でしょうか?
 人間とくっ付いていることです。
 通常の商品ですと、価格が下がった場合、原価割れや赤字などで、供給企業は淘汰されたり、事業を諦めたりします。また、価格が下がると需要が増えます。ある一定の段階で、供給者と受給者の力関係がある程度の均衡状態になります。
【ポイントは?】
 ポイントは、供給過剰になっても、容易に供給が減らない。価格が下がったとしても、容易に需要が増えない点です。つまり、通常の「市場による調整メカニズム」が働きにくい。
【供給から見て?】
 労働力は、不足なら増やす、過剰なら削減という調整行為が、容易ではありません。過剰だから人を殺すなんてできないわけです。
 供給するかしないかは労働者の意思です。「安すぎるよ」と人々が諦めるまで、供給量の減少がありません。そのため、特に単純労働は、容易に過剰状態になります。
【需要から見て】
 一方、賃金が安いからといって、1人で済むところを2人雇うということもありません。賃金が下がったとしても、需要は容易には増えません。
【細かく言いますと】
 仕事をしても、しなくても、おなかは減ります。労働力を供給しなくても、固定費がかかり続けるわけです。一方、労働力を供給したからといって、お金がかかるわけでもありません(腹が減ってより多くのご飯を食べるでしょうが)。
 そして、安くでも、0円よりかまし、という判断が働きます。
 結果、不景気で失業者が溢れている場合、原価割れや赤字など供給量を下げる要因が無いため、供給量はなかなか減りません。 
 まさに、労働力のたたき売りが始まるわけです。
【競争上不利にならない・価格転嫁しやすい】
 これは重要なポイントです。同一業界で、自社だけ、賃金を上げますと、自社の価格競争力・採算性が低下します。しかし、最低賃金では地域全体の賃金が上がりますので、とくに自社だけが競争上不利になることはありません。賃金インフレが起きますが...低賃金者は低賃金ですので、社会においてのコストの比率は小さいので、ほんの僅かです。
【まとめ?】
 自由市場における調整メカニズムが、企業や製品ほど容易ではありません。そのため、労働状態の過剰供給による、たたき売りを防ぐためにも、最低賃金が必要になります。
 もっとも、現在の最低賃金は、あまりにも低すぎて、生活水準の上昇・叩き売り防止として機能していませんが。

PS
 低所得者の賃金を上げますと、競争力だのインフレだの言われますが、高所得者の賃金が上がっても、競争力だのインフレだの言われません。不思議ですね。

PS2
 「賃上げに耐えられない企業が倒産し、大企業は工場を海外に脱出」と言われますが...時給が700円から1000円になったくらいで、潰れる企業は、そもそも中国・インド・円高などに耐えられないでしょうし、1000円を700円にしたところで、競争力はたかが知れています。ていうか、低所得者の低賃金で勝負なんて...ギャグみたいな大企業です。高い給与貰っている人は、何をやっているんでしょうか?

PS3
 GMの労働者の時給は、OB年金・医療保険いろいろ含めると時給7000円くらいだったらしい。そりゃ潰れるよ。