3Dプリンタでインターネット程のインパクトが起きるかと言うと、たぶんNOです。
しかし、プチ産業革命程度のことは起きなくもない。
3Dプリンタ革命を理解するために、アメリカの現在置かれている状況と生き残り策を理解する必要があると思います。
要するに、3Dプリンタは、アメリカが新興国と差別化するための重要なツールなわけです。
差別化であり、対抗し打ち倒すものではないことを忘れてはいけません。
キーワードは、①ニチ市場と②デザインで稼ぐ③中小企業とベンチャーです。
【大量生産←→超多品種少量】
IPHONEは1モデルで1億台売るT型フォード以上の究極の大量生産ですが。
生産は中国で行われています。
賃金の高いアメリカではもう無理と言う感じです。
アメリカの場合、安く生産すると言う点に関しては中国などの新興国には到底かないませんし。
賃金を下げて、新興国と低賃金勝負をする気もあまりありません。そんことしても勝てませんし、国民を貧しくするだけですので。
労働集約型の大量生産モデルは、アメリカには向かない。
その一方で、液晶パネル工場などの資本投下型の大量生産モデルも、韓国や日本との激突が待っています。
つまり収益性が悪い。
そして、たぶん負ける。
アメリカが勝てるのは、創造性発揮型の知識集約型の生産物あたりとなります。
もっとも、知識集約型であっても、大量生産なら中国や韓国に流れてしまう。
そのため、多品種少量ということが重要になります。
【多品種少量でアメリカで生産】
なんでも、金属を扱える3Dプリンタができたそうです。
プラスチック、金属、セラミック、炭素繊維、細胞などいろいろと用途が広がりそうです。
アメリカ国内の強い製造業は、高度な設計能力が必要なジェットエンジン、航空機などの少量生産ものです。
そこで、金属を扱える3Dプリンタを使っているみたいですね。
また、アメリカに存在する中小企業は、大企業の下請けで部品を大量に生産すると言う企業よりも。
自分たちでニチ向け商品をを設計し、生産する会社が非常に多いです。
つまり、3Dプリンタはこれらの中小企業にとって強い味方になる可能性があります。
アメリカの場合、イノベーションを起こすのはベンチャー・中小企業です。中小企業が強さの肝と言って良い。
アメリカは、ガレージ起業、ガレージベンチャーが盛んなので、3Dプリンタというのは、ガレージ起業を支援する大きなツールになるわけですね(まぁ、オフィスでも良いのですが)。
【デザイン(設計)へのさらなるパワーシフト】
アメリカが狙っているのは、生産の低価格化・低コスト競争は他コクに任せて、デザイン(設計)力を生かして富を得ること。
別の見方では、
自分はニッチで稼いで、大量生産品の生産はもう新興国に任せて低コスト競争させて、自分たちは安く買う
デザインがそんなに儲かるかと言うとかなり儲かる。
Tシャツなんか、デザインひとつで200円で生産されたものが2000円にもなる。
まぁ、これは極端ですが。
システム半導体の価格の半分前後は、デザイン代なので、かなり儲かます。
とは言っても、アメリカ人以外にも、中国人やインド人も設計力はあります。
単純な設計力勝負も今後難しくなります。
そのため、間違いなく残るアメリカの強みは、アメリカ大市場への近さとなります。
国内のユーザーに合わせての多品種少量生産。
そして、国内で生産数が増えて、国外でも売れればラッキーと言うことでしょうか。
ただし、この際の生産は、アメリカで生産して輸出すると言うよりも、データを輸出して現地の3Dプリンタで生産となるでしょう。
【日本は】
設計が外部の下請けの会社は、仕事が減るかもしれません。
対して、自社で企画、設計する会社にとっては追い風になるものです。
基本的に、自社で企画・設計する会社の方が、単純な下請けよりも利益率が高いので、ますます差がつくかもしれませんね。