日本の輸出依存度の話

 結論から良いますと、この輸出依存度という数値は、何の意味も無いです。
 輸出依存度が30%だからだと言って、国内生産の30%を占めていると限りません。
 現状の日本の輸出依存度は、18%程度。それに対して、ドイツや台湾などは40%程度。
 これらの数字を持ち出して、日本の輸出依存度をまだまだ低いという人が居ますが、かなり胡散臭い理屈だ。
 なぜか、「地理」「産業構造」を無視しているためだ。
【地理】
 輸出依存度が高いドイツは、39.9%とですが、主な輸出相手がフランス(10.6%)、アメリカ(9.3%)、イギリス(8.4%)、イタリア(7.4%)、オランダ(6.2%)、オーストリア(5.3%)、ベルギー(5.0%)、スペイン(4.9%)といった具合に、実態はEU圏内での貿易が占める割合が大きいです。つまり、関東と大阪、九州との取引を貿易に含めているようなもの。
 具体的には、ユーロ圏が約42%で、EU圏ですと64%。欧州だと75%になります(http://www.jetro.go.jp/world/europe/de/stat_02/)。
【産業構造】
 シンガポール・香港などですと...輸出依存度が200%を超えています。シンガポールは貿易中継基地ですし、国自身が小さいため、とんでもない数値が出ます。
 基本的に、国が小さく組立て加工貿易の産業構造の場合、輸出依存度が高まります。
 韓国・台湾などは、日本から部品や材料を輸入して、組立て・加工をして輸出しています。輸出が伸びると輸入も伸びる構造です(再輸出型の構造です)。そのため、GDPで割る輸出依存度では数字が水ぶくれします。たぶん、輸出が100億円増えると輸入も70億円くらい伸びているはずです。この場合、GDPは30億円増えます。
 日本は、それに対して、原材料を輸入して部品・材料に加工していますので、輸出が伸びたとしても、輸入量はそれほど増えません(おそらく20%〜30%程度でしょう)。たぶん、輸出が100億円増えると輸入も20〜30億円くらい伸びているはずです。この場合、GDPは80〜70億円増えます。
【もし仮に、日本の輸出依存度を40%にするのであれば...】
 部品や素材輸出型ではなく、部品・組立て輸出型になれということです。それって、低賃金勝負の中国や新興国の産業構造モデルですね。
 そうでなければ、製造業のGDP比率を40%くらいに引き上げる必要があります(現状は20%中頃)。何と言うか、偉く古い産業モデルですね。
【何が輸出依存なのか?】
 それは、GDPの増加シナリオ・メカニズムです。
 日本は、2003〜2008年前半にかけましてGDPが増加しましたが...国内の個人消費が増えたから生産(GDP)が増えたというシナリオではないんですね。輸出分と、輸出を生産するための投資が増えて、その結果、個人消費が増えると言う形になっています。
 終始、個人需要中心シナリオに移項せず、リーマンショックにより、GDP増加シナリオが減少シナリオになり、輸出の減少が、個人消費の減少になってしまったわけです。
 金額的にも「個人消費の増加>投資+輸出の増加」ならまだ良いのですが、「個人消費の増加<投資+輸出の増加」みたいな感じでした。そのため、妙に実感のない好景気だったわけです。