エルピーダ経営破綻は、製造業では戦後最大級の破綻だということですが、これも持って製造業はもう駄目なのでしょうか?
駄目だ、駄目だという評論家・経営者は多いですね。
大変なのは間違いありません。逃げるのが一番簡単でしょうね。
もっとも、逃げたところで勝てる理由はありませんが・・・・
エルピーダ=駄目会社というイメージで語られますが、2006年は680億円くらい営業利益出していたんですよ。
その代わり、2008年は、1680億円くら経常赤字出していますが。
2010年も、357億円くらい営業利益出したのですが・・・
2011年、DRAMの価格暴落により死んでしまいました。
【脱工業化社会】
話は変わりますが、この脱工業化社会というのは、かなり微妙な表現だと思います。
「ポスト○×」とは、「○○後、○○の後に続く」といった意味があります。
ラテン語のpostは、 after に相当する言葉のようです。
つまり、「脱」なんて、意味はどこにもない。
工業社会の後に、来る社会という意味だと思うのですが・・・・
ところが、「脱」という言葉が付いているせいか、「工業を辞める」という意味に取られてしまっている。
そのため、工業を辞める=サービス業ということになってしまう。
確かに、アメリカでも、製造業の比率は低下して、サービス業の比率が増えているが、工業・製造業を辞めたわけではない。
アメリカが世界最大級の工業国という事実を忘れていないだろうか?
インテルは、バリバリにアメリカで生産しているし。
エルピーダの支援・提携相手に名前が上がっているマイクロンは、アメリカでもDRAMを生産している。
この話をすると、アメリカは土地が安いからというが、本当にそれだけなのだろうか?
90年の中頃、マイクロンがDRAMの生産プロセスを改革して、日本メーカーの製造コストより大場に安く生産するようになり、DRAMの価格が暴落するマイクロンショックというのがありました。
サムスンがウォン安で圧倒的に有利になったのは間違いないが、同じように通貨が下がった台湾も対抗できなかった点にもう少し着目するべきなのではないだろうか?
日本は、通貨の責任しているが、経営や生産技術の面で敗北している可能性もあるのではないだろうか。
結局、細かい分析もせずに、「駄目だ、駄目だ」と言う経営者に、任せているようでは間違いなく駄目なのですが。
【統計による歪みと分業】
統計上、厄介なのがソフト産業や設計部門のあつかい。
アメリカのマイクロソフトやグーグルは、第3次産業にあたるのですが。
メーカーがソフトを社内で開発した場合第2次産業に分類され、ソフト開発専門の会社に発注した場合、第3次産業に分類されるようです。
NVIDIAなどのファブレスも、製造工場がないので、第3次に分類されます。
対して、日本半導体の設計部門はメーカーの中にあるので、第2次に分類されます。
そのため、製造業が肥大化して見えます(まぁ、基本的にアメリカより製造業が盛んなのは間違いないと思いますが)。
【市況に対応できない経営コンセプト】
話を戻しまして、再びエルピーダの話。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/20111129_494042.html
サムスンは、DRAMとフラッシュの両方を手掛けています。
市況を見ながら、DRAMとフラッシュを生産することにより、リスクを分散させています。
(どっちも市況が悪化したらお手上げですが・・・・)
エルピーダは、NEC・日立・三菱電機の各社寄せ集めのDRAM専業メーカーなので、始めから相当不利な状態であったと言えます。
東芝のフラッシュ事業と一緒であれば、もう少し運命が変わっていたと思うのですが、当時、フラッシュは成長分野として期待されていたため、フラッシュ事業は東芝から出されませんでした。
東芝も含めた、日の丸連合だったら、ここまで苦労しなかっただろうなと思ってしまいます。
話は変わりますが、液晶も似たようなものです。韓国・台湾メーカーは、パソコンとTVの液晶パネルを生産しており、市況により比率を変えています。
対して、シャープは、ほぼTVのみです。
TV向けとパソコン向けでは、求められる性能が違います。一般的に、TV向けの方が要求が高いです。
そのため、パソコン向けラインで、TV向けを生産しますと、低品質だと言われてしまうのですが、液晶技術の進歩もあり、結局低品質・低価格に飲まれてしまいました。
PS
ファブレスは儲かるのだろうか。
マイクロプロセッサなどの設計が肝の半導体は、製造コストの半分以上を設計・デザイン料として取っていたりします。
(もちろん製品により違います)
製造側には半分残るで、それなりの金額ですが、設計している側も結構儲かるようです。