もうほとんど東京での公開が終わった「クロニクル」見てきました。
面白かったですね。
左:アンドリュー
中:マット
右:スティーブ
概要だけ見ますと、スクールカーストDレベル。母は病気で父は暴力・アル中?と家庭も問題だらけの主人公、高校生アンドリューが、未知の物体に遭遇して超能力を得るんだけど・・・・
犯罪犯して、自暴自棄になって、仲間に殺される話。
基本的に、この映画を超能力バトル映画だと思うと、面白くありません。
青春映画です。
じゃあ、超能力が必要ないかと言いますと、そんなこともありません。
超能力があっても、問題を全然解決できていないそして、最悪の結果に到達してしまう。超能力ではなく、人格があれば最悪の事態は回避でき幸せになれたかもというのが最大の特徴ではないでしょうか?
【詳細あらすじ】
良くある話と言えば、良くある話なんだけど、詳細は一捻りきいています。
超能力を持つのは、三人の高校生。
スクールカースト最低レベルの主人公、高校生アンドリュー。
母は病気持ちです。かなり重症。薬は高い。
父は元消防士。昔はたぶん自慢の父だったのでしょう。
怪我をして引退して以降は、保健だよりの働かない生活。
ほとんどアル中と言う感じで、主人公に当たります。
そんな環境で育ち、暮らす主人公は、ATフィールド全開状態です。
いとこで以前は悪ガキぽかった近年、哲学に目覚めたマット。
優等生で政治家をめざし、人間的にも立派で友達の多いスティーブ。
この三人、超能力に目覚めて何をするかと言うと・・・・イタズラ。
女の子のスカート捲ったり。
スーパーで悪戯したり。
バカします。
スティーブに至っては、彼女を放り出して、三人で遊んでいます。
男は所詮、ガキなのよ。いつまで経っても子供なのよの世界です。
作中で、彼女を得てベッドインしたマット、童貞をこじらせた主人公アンドリューとまさに対比構造です。
ちなみに、この時点で、一番超能力が協力で扱い方が上手いのが、主人公のアンドリュー。
しかし、途中でトラブルが起きます。
車に乗っている途中で、後ろの車に煽られたのですが、アンドリューがその車に対して、超能力を使います。
その結果、車は大破して、崖に落ち、さらに湖に落ちる事故を起こしてしまいます。
その時の対応が対照的。
すかさず湖に飛び込み人命救助に動く優等生スティーブ。
主人公は自分がしでかした事に対して行動せず傍観し(ビデオを回している)、責任の大きさすらも感じていない様子。
もうこの時点で人間性の違いがハッキリ出ています。
当初、三人はバカはしますけど、暴力性はないんです。
これは、スティーブとマッドの性格・人間性の結果なんでしょうね。
その後、スティーブが超能力を使った空の飛び方を考えます。
その飛行中、飛行機が登場し、スティーブが墜落するのですが、主人公、アンドリューが命を助けます。
これにより、スティーブはアンドリューに強い恩を感じます。
この主人公、良い面もあれば、悪い面もある。
一言で言うと普通の人間。
そして、善にも悪にもなり得る不安定な存在。
その後、スティーブは、アンドリューをマジシャンに仕立てて、アンドリューを盛り立てます。
タレントショーで、超魔術を披露して、アンドリューは一夜で大人気です。
そして、その夜のパーティで、童貞卒業となりかけますが、肝心なところで、ゲロを吐いてしまい「下呂吐き君」へ。
超能力を得ても、良い友人を得ても、チェンスを与えられても、最低のスクールカーストから脱することができない。
そして、学校でバカにされ、超能力でもって、人を傷つけてしまう。
そして、大きな事件が起きます。
細かい点は忘れましたが・・・・
父親は主人公を批判します。
俺のお金を無駄遣いする。
俺は、お前の学費と母の治療費でお金はない。
それに対して、主人公は高校は公立なので学費はないと切れます。
嘘ばっかりの父親ですね。
主人公を理解しようとしない。その努力すらしない。
「童貞をこじらせた」上に家庭内のトラブルなどで、
イライラした主人公は、その状態で上空に行きます。
三人の間では軽いテレパシーのようなものがあるらしく。
心配したスティーブが、主人公の元に来ます。
そして、主人公がイライラをスティーブに向けたためのなのか、雷がスティーブを直撃して、スティーブが死んでしまいます。
当然、マットは主人公を疑いますが、力では主人公が上。
もう完全にパワーバランスが壊れ、主人公の暴走が始まります。
以前、病気の母親は、自信喪失気味の主人公へあなたは強いのよと言いますが・・・・
主人公は完全に別の方向へ行ってしまいます。
「自分は人間よりも優れているんだ〜」と完全に別の方向に思想が行ってしまいます。
母親の薬代のために、お金を得るために、消防士の服装をして、犯罪を犯すことを考えます。
家を出る際に、咳をして苦しんでいる母親を超能力で横にしてあげ、毛布を掛けてあげる点が印象的です。
手始めに近所のチンピラを襲います。
当然、大したお金になりません。
次に、ガソリンスタンドを襲います。
銀行襲えよと思いますが・・・・まぁ、ここで超能力の使い方を間違えて、ガソリンスタンドを爆発させてしまい入院してしまいます。
そこに父親登場。
母が死んだことを知らせます。
そして、主人公を批判します。
おまえを探していて、母の側にいられなかった。
母親が死んだのはお前のせいだと主人公を責めます。
たぶん、これは嘘です。
そして、主人公の怒りが爆発します。
父を殺そうとして、高いところから落としますが、マットが助けてしまいます。
そして、マットにも憎悪を向けます。
軽い超能力バトルですが、マットの目的は、主人公を落ち着かせることなので、そんな激しいバトルではありません。
警察が登場しますが・・・・二人を怪物扱いして、邪魔するだけです。
最後にどうしようもなくなったマットは、主人公を殺してしまいます。
【感想】
良い友人もでき、超能力も持ち、変われる機会はあったのに・・・・環境や不運や自分のせいで良い方向に変わることができない。
最悪の事態に落ちて、怪物になってしまった。逃れられない運命ではなく、逃れられたのに、未熟さゆえに不幸を招き、ハッピーエンドにたどり着けない。
苦い話。
その辺り等身大であり、ありそうでなかった物語に感じられるのかもしれない。
たびたび、家で自分自身をビデオに記録するシーンが出てきます。
自分を撮っているのも印象的なのでしょうが・・・
母親の咳の音が聞こえているのに、主人公が無表情、何もしないのが気になります。
主人公の人間的な冷たさを表しているのか、それとも超能力では解決できない無常さを表しているのか、主人公のやるせない日常、主人公の虚無感を表しているか・・・・いろいろ解釈が考えられます。
また、部屋の中に子供の頃に書いたと思われる刀を持ったヒーローらしき絵が張ってあります。
高校生にもなって、子供の頃に描いた絵を部屋に置くなんて、アンドリューの心理状態はどんな感じなんでしょうか?