いじめ対策を経営学的に考える。

 現在、虐めの件数をKPIとしています。
 評価は少なければ良い。多ければ悪いです。


 間違っていないですし、悪くはないですが、少ないような気がします。
 企業で言いますと、利益だけをKPIにしているようなものです。


 結果だけを数値評価していて、その過程を評価していない。


 この結果だけの数値評価は、結果重視・プロセス軽視になり、結果として、あまり良い結果にならないことが多い。


 他にどんなKPIが考えられるのでしょうか?
 場当たり的に考えてみました。考察不足です。


ハインリッヒの法則ヒヤリハット】 
 ハインリッヒの法則というものがあります。
 1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというものです。


 要するに、突然虐めが起きるのではなく、なんらかの予兆・小さな異常があるはずです。

 工場では、ヒヤリハットと言って、事故が起きなくても、ヒヤリハットしたことを報告して対策を行います。
 予防ですね。

 虐めにも、ヒヤリハットに相当するものがあるはずです(ぱっと頭に浮かびませんが)
 ヒヤリハットを見つけた、感じた時点で、報告をきっちして対策するのも予防策としてあるかもしれません。


 そんなこと、めんどくさくて、いちいちやってられないという先生もいるでしょうが・・・・まともな工場では、いちいちやっているんですよ。


【生徒へのアンケート】
 企業では、モラルサーベイという従業員アンケートをやる場合があります。
 その応用です。


 そもそも、多くの生徒自身、虐めの起きている環境を好ましいとは思っていません。
 虐めが起きている環境は、虐めを受けていない生徒にとっても窮屈で息苦しいものです。
 そして、場の空気の良さ・悪さはアンケートに現れるはずです。


 生徒のアンケートの返答の数値を利用します。
 とても良い4点、とても悪い0点などで、数値化して、評価します。

 子供は悪いことをしているのに、怒られないことに疑問を持ち、不信をもちます。
 悪いことをした場合ちゃんと怒られている、自分の言い訳もちゃんと聞かれている、
 大人・学校・先生への信頼度、エコヒイキがあるないなど、アンケートを取ると良いかもしれません。


【解決時間】
 いじめの発生から消滅までの時間です。
 解決時間をKPIにしても良いかもしれません。
 予防ではなく、起きてしまったことに対するKPIです。
 発生件数の削減にはなりませんが、時間と共に深刻化するのを防ぐことが出来ます。

 現在の発生件数のKPIは解決を含みません。
 そして、虐めの発覚は減点を意味します。
 これでは、解決しようと言う前向きの意志よりも、自分の評価が落ちることへの恐れが多くなる危険性があります。
(教師も所詮人間・サラリーマンですので)

 虐めの発生から発見までの時間、
 発見から対応までの時間、
 発見から解決までの時間、などKPIに出来そうです。

 あと、加害者の再犯率なども良いかもしれません。


【先生のミスには甘く、ルール破りには厳罰を】
 悲しいことに、一部の先生方は嘘をつきます。
 虐めの件数をKPIとしている現状では、虐めを見て見ぬ振りすることにより件数を減らすことが考えられます。
 気が付かない(ミス)よりも、報告義務を破る行為には厳罰を行わないといけません。


PS

こちらのHPにあったいじめ対策。
http://d.hatena.ne.jp/moriguchiakira/20090520

1 いじめの認知は、本人、親、友人の誰からの報告であっても

 「この事態を心配している人から報告があった」で統一する。

 ※ いじめ加害者やその親は「誰がそんなこと言った」と言いがちなので、

  教員側の対応を統一しておくことは極めて有効と思われます。

2 必ず、一人の教員ではなくチームで対応する。

 ※ チーム対応は教員の一番苦手とするところですが、是非克服してほしいところです。

3 複数の加害者(大抵そうです)と複数の教員が別部屋で1対1で対応する。

 ※ ここで、各加害者の発言に矛盾が生じます。

4 15分後に部屋に加害者を残して教員が集合し、情報交換・矛盾点の分析を行う。

5 3・4を繰り返し追求することで、加害者に「いじめの事実」を認定させる。

 ※ 3・4・5は明日からでも実行できるノウハウではないでしょうか。

   「加害者に吐かせる」必要のある仕事(刑事に限らず税金徴収員等々)ではよく使うテクニックです。

 
6 事実を認めた加害者に対し「泣くまで」反省を迫る。

 ※ ここは教師の真骨頂です。

   中学生ともなると(特にいじめの加害者のような奴は)脅すだけでは、まず泣きません。

   そこで、刑事ドラマのカツどんに当たる要素が必要になるそうです。

   加害者ががんばってきたことの写真(部活動や体育祭・文化祭他)などを見せて、

   「なのにお前は、今、何をやってるんだ」みたいな感じで迫るらしいです。

7 いじめの事実を認め、「泣くまで」反省した加害者は、通常、被害者に謝りたくなるのですが、

 すぐに謝らせることはしない。

 ※ すぐに謝ると加害者が「すっきり」するからです。

8 少なくとも一週間の時間を置いて、加害者に謝ることを許す。

 ※ 被害者にとって、加害者から謝ってもらうことは大きな癒しになるという報告を別の会合で聞きました。

9 保護者を交えて、いじめの事実を報告する。

 ※ その際、加害者・被害者を実名で報告するのか否かは聞き漏らしました。

 一見警察の尋問みたいだけど、人間の心理や学校組織の問題点を見事に対策している。
 2の組織対応は学校ではやられていない。生活指導に押し付けている感じだ。
 人間三人以上が、まとまって行動すると、組織的活動と認識されます。
 三人以上の先生が活動することにより、学校・先生も本気だなと子供に伝わります。

 逆に、生活指導の先生ひとりだと、本気ではない・逃げ腰・ひとりに押し付けて逃げいるなどのメッセージを与えるでしょう。

さらに、教師がなぜ「いじめ」を見てみぬふりをするのかについて、説明されています。

Q1 なぜ、教師は見て見ぬふりをしたのか。なぜ、そのようなことができるのでしょうか。

A1 中学校になると教師もスクールカーストに組み込まれており、しかもその頂点にいるとは限りません。

  ですから、加害者のスクールカーストの方が教師よりも高い場合には、見てみぬふりをしなければ、教師に対するいじめ(クラス全員による授業無視等)が起きる可能性があるからです。

 ※ 教師もスクールカーストに組み込まれているというご指摘は、北海道で教師の授業力向上に尽力している堀裕嗣氏から、以前に頂いたものです。

Q2 たとえば、このようなことが学校の上司(校長など)に知られたり、あるいは教育委員会に知られたりすることで、その教師に「マイナス点」がつけられたりするものなのでしょうか。

マイナスを恐れて、「事なかれ主義」になっているのでしょうか。

A2 学級崩壊が起きた場合は誰の目にも明らかなのでマイナス点を付けれる可能性は高いですが、クラスにいじめがあっても発覚しなければマイナス点は付けられません。

 したがって、「いじめのある平穏なクラス」は「いじめのない荒れたクラス」よりも「事なかれ主義」の教師にとって良いということになります。

Q3 こうした問題は教師自身にあるのでしょうか。それとも教育委員会、あるいはいまの学校教育にあるのでしょうか。

A3 基本的には学校教育にありますが、それを許しているのは教育委員会、というよりも教育委員会事務局の役人達(会見に出てきたり、委員が会見したとしても原稿を書いている人達)です。

 ただし、立派な教師は他の公務員と異なり、一人でも「いじめ」に立ち向かえます。

 その時は、「加害者の人権」側につく者たちと一人で戦う覚悟がいります。

※ 加害者本人、加害者の保護者、教育委員会事務局までは、今回もそうですが通常「加害者の人権」側に立ちます。場合によっては校長もそうです。 

Q4 かつて、「お葬式ごっこ」といったイジメが問題になったことがありました。今回の問題となにか違いはありますか。それとも学校・教育は何も変わっていないのでしょうか。

A4 何も変わっていません。

 学校を正常化するためには、教育委員会制度を抜本的に改める必要があります。

A1とA2は、なるほどです。
「いじめのある平穏なクラス」は「いじめのない荒れたクラス」よりも「事なかれ主義」の教師にとって良いという答えは、まさにツボを得た答えです。虐められっ子は、本当に生贄ですね。